カレッジマネジメント239号
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62グローバルに活躍するエンジニアの素地を持った生徒を選抜する多様な方法で、協働性や主体性、メタ認知、言語化能力等を問う事例の方法で評価を行うことについて、「エンジニアとして新しいものを生み出していく際に最も重要な『多様な人と協働して生み出す』という点を多面的に問い、総合的に評価する観点から設計しています」(安永氏)とのことで、適性検査で基礎学力を担保しながら、グループワークで協働性や主体性を、講義の視聴により工学の学びとのマッチング等を見ている。同時に、レポートや課題解決型記述問題、学びの計画書、グループワークの自己評価シート等、多様な方法で「書かせる」ことを重視した設計もなされている。その意図を安永氏は、「大学の学びに必要な基礎力として、自分の考えを文章に落とし込んで書ける、大学の講義に食らいついて自分なりに理解し、それをアウトプットできるといった、学習方略と言語化能力が備わっているかを、様々な手法で見ています」と説明する。加えて課題解決型記述問題では、算数・数学・理科の知識を教科横断で活用しながら段落構成を考えて記述することを、学びの計画書では、入学後に学びたいことを理由・背景も含めて整理して書き起こすことを求めており、メタ認知や言語化能力、教科横断で知識を活用する力が問われる内容とも言えるだろう。こうした内容は、九工大が育成・輩出を目指すGCEを備えた人材となる素地のある生徒を選抜する目的だけでなく、「問題を通じて高校での学びで培ってほしい力を提示するという、高校に向けたメッセージでもあります」と安永氏は話す。特に意識されているのは高校の「探究」との理事・副学長安永卓生 氏アドミッション・オフィサー木村智志 氏Case Studies九州工業大学(以下、九工大)は、2021年度入学者選抜より多様な資質・能力を持つ学生を評価する選抜区分「総合型選抜Ⅰ」を実施している。工学系技術者を育成・輩出する大学として、一般選抜とは異なる位置づけで設けたこの選抜の狙いを、理事・副学長(教育接続・連携PF担当)の安永卓生教授と、アドミッション・オフィサーの木村智志講師に伺った。九工大が「総合型選抜Ⅰ」を設けた背景には、社会の変化に伴い、複数人で協働して新しいものを生み出していくことがエンジニアに求められるようになってきたことがあるという。この変化を受け、九工大では「多様な文化の受容」「コミュニケーション力」「自律的学習力」「課題発見・解決力(探究する力)」「デザイン力(エンジニアリング・デザイン)」の5つをグローバルに活躍するエンジニアに求められるコンピテンシー(GCE: Global Competency for Engineer)と定義づけ、GCEを備えたエンジニアを養成するべく教育改革と入試改革を進めてきた。「総合型選抜Ⅰの設置もこの流れの中にあり、また、中期目標の中で学長方針として据えている、キャンパスの中にできるだけ多様な学生がいる状態を実現するための選抜区分の一つでもあります」と安永氏は説明する。「総合型選抜Ⅰ」は図に示す通り、第1段階選抜では、講義を視聴して書くレポートと課題解決型記述問題を、第2段階選抜では、事前提出の「学びの計画書」と、CBTによる適性検査、グループワーク、個人面接を課している。6種類も03_九州工業大学 総合型選抜Ⅰ今後あるべきエンジニア像を定義しその素地を見る選抜区分を設置

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