65個々に異なる強みを持つ多様な学生が入学フィードバックシートサンプル『探究・ビジコン型』は、高校での探究授業や、ビジネスプランコンテストへの挑戦等の際に考えたアイデアを、本学部でどのように発展させるのかを考えてほしいということ、また、将来的にはそのアイデアを持って起業等にも挑戦してほしいという期待も込めて設けています。『アトツギ型』は、本学がある大阪府下において、中小企業の後継者不足が大きな課題であること、また、元々入学者に経営者や自営業の跡取りの方が多いこと等から、事業承継を担える人材を輩出して地域に必要な大学でありたいという狙いから設けています」採点は、育成を目指す人材像をもとに入学者に求める能力・資質を言語化し、その上で詳細に設定した評価項目に従って教員が行う。「一般入試等では測れなかった新しい発想を生み出す思考力やそれを伝える説明力、多様な人と協力してゴールにたどり着く力等を把握することができています」と菊地氏は胸を張る。そして、特徴的なのは、全ての受験者に対して、合否にかかわらず評価結果をフィードバックしていることだ。評価項目に沿ってレーダーチャートで示すとともに、特に優れていた点や改善が必要な点について、評価者からのコメントを記載(左図)。その意図を菊地氏は、「本人の評価結果と受験生の平均値をプロットすることで、自身の優れた点と他の受験生に比べて不足している点を自己分析できるようにしています。特に合格者には、自身の強みやどのような面でチームに貢献できるかを把握し、入学後、すぐにPBLで発揮してほしいという狙いもあります」と話す。学部の方針の一つである「世界標準のリーダーシップを学ぶ」において、各自の得意や強みを発揮してチームにプラスの効果を与えることがリーダーシップの要素として重要であるという考えがあるからこその期待だ。こうした選抜を経て入学してくる学生の特徴として、菊地氏は、「行動力や発信力、粘り強さ等に目を見張るものがあります。とりわけ、入学後のグループワークでダメ出しを受けても粘り強く食らいつき、他者を巻き込みながらゴールに向かっていく学生が多いように感じています」と話す。また、「評価項目を多様に設定しているように、学生が持つ強みも多様。それは、現代の複雑な問題を解決するにはたくさんの素養が必要で、それぞれを補い合う多様性がチームの中には必要であるという実態にも合っています」と続ける。今後の課題としては、高校に対する広報のあり方が挙げられるという。「探究授業等高校での学びと私達の教育にギャップを感じて『うちの生徒をこの大学に送り出すのは難しい』と先生方に思われるのはもったいないこと。LAや様々なキャリアを持つ教職員が学びをサポートしていること等を伝え、心配なく入っていける学部だと感じてもらえるような広報をしていきたいと思っています」と菊地氏。そして、「自主性と、世の中をより良くしたいという意識を持っている学生を十分に伸ばしてあげられる組織であり続けられるよう、世の中の情勢の変化を踏まえながら課題を解決できる人材にはどのような資質・素養が必要なのかを分析し続け、教育と入試に反映させていきたい」と今後を見据えている。(文/浅田夕香)第2特集●大学入学者選抜の現在地
元のページ ../index.html#65