カレッジマネジメント239号
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70次の50年を生き抜くためにデジタルを軸に教育力を強化する推進役となる学内体制を構築し学内外の連携を強化滋賀短期大学(以下、滋賀短大)は2022年、文科省「デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業DXをけん引する高度専門人材育成事業」に「デジタルマインドとコミュニケーションスキルを兼備したビジネス実務人材の育成」が採択された。全国で短大としては唯一の採択である。その内容や背景について、秋山 元秀学長、デジタルライフビジネス学科長の小山内 幸治特別教授、同学科の小笠原 寛夫講師にお話を伺った。秋山氏は「短大という教育機関の在り様は四大以上にどんどん変容しています」と述べる。最盛期の1996年には598校あった学校数は、2023年には約半数の300校にまで減少。女子の高等教育の受け皿になっていた時代から、資格取得や職業教育を中心に、短期高等教育機関に適した領域に特化した教育展開が中心になっている。「現在も一定のニーズはあるものの、将来的に短大がこのままでよいとは思えません。かといって、四大のような新増設等の教育強化の動きも、組織が小さい短大では財政面も含めて大変難しいのが実態です」。そんななかでも滋賀短大は教育力強化の動きを模索してきた。2020~2022年度の中期計画においては、「学修成果の可視化を目的とした3つのポリシーの見直し」「教育力向上WG(ワーキンググループ)の設置」「学生の成長の可視化」といったテーマと並んで、「専門教育の充実」の文脈で新学科の設置が盛り込まれている。「厳しいマーケットで生き残るには、教育基盤の充実と、他にはない特色に裏づけられた教育力が必要です」と秋山氏はその意図を説明する。ここで活用されたのが、2019年に大学設置基準改正によって制度化された学部(学科)等連係課程制度である。「既リクルート カレッジマネジメント239 │Jan. - Mar. 2024学長秋山 元秀 氏デジタルライフビジネス学科長に学内にあるリソースを有効に組み合わせることで学科設置ができるこの制度を使い、新たにデジタル社会における活躍人材を育成しようと考えました」。具体的には、生活学科から10名、ビジネスコミュニケーション学科から20名の定員を新学科に充て、両学科の教員が兼務するかたちで、今後の時代に必須となるデジタルを軸に新たな教育を創り上げた。それが、2022年設置のデジタルライフビジネス学科である。今回のビジネスコミュニケーション学科の採択内容は、この学科新設を目指した動きのひとつでもあった。申請書においては、新設学科認可のタイミングの問題もあり、既存のビジネスコミュニケーション学科を対象に構想・申請していたが、教育内容の面からいえば、新学科のほうが、よりこの事業との整合性が高い。そうした経緯もあり、新学科ありきではなく既存の学科についてもデジタル教育推進を盛り込む内容となっている。「新学科だけではなく、全学的にもデジタル教育を推進し、それを滋賀短大の特色にしようと考えています」と秋山氏は言う。デジタルありきではなく、短大として今後生き残るのに必要かつ適切な教育のチューニングについて模索するなか、社会ニーズ等を踏まえてデジタル領域が特色として整合した、ということなのだろう。あくまで本丸は「教育力強化」そのものだ。新学科はその突破口なのである。時系列で見ると、2021年9月にデジタルライフビジネス学科設置届出、翌2022年3月に産業DX採択、同4月に新学科設置、同8月にはMDASHリテラシー採択と、改革が集中している。設計は同時並行的に行われていたという。その主体は、教学マネジメント委員会の下に設けられた学長を座特別教授小山内 幸治 氏デジタルライフビジネス学科講師小笠原 寛夫 氏事例report_14 滋賀短期大学#8による新たな価値創出データサイエンス(DS)教育の最前線デジタルスキルを備えたビジネス実務人材の育成で地域貢献を志向する

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