カレッジマネジメント239号
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73外部資金獲得を盛り込んだ中期計画と確実なデジタル実装アナログからデジタルへ過渡期にある介護業界ことだ(小誌234号90-91P)。ICEモデルを用いた質保証をデジタルで支える仕組みを構築する過程で、DPの1項目を「教養として文化・社会・自然等に関する知識や社会人として必要な言語運用能力・ICTリテラシー等汎用的な技術と能力を身につけ、活用できること」と再定義したという。DPに今後の社会で活躍するための要素を盛り込み、そのための教育を講じる流れで、社会に必要なデジタル人材育成に辿り着くのは必然とも言えた。吉村作治現総長がサイバー大学の初代学長をしていたため、教育のオンライン化について明るかったことも奏功し、コロナ禍前には既に学修成果の可視化のためLMS(Learning Management System)を全学で導入し、教育プロセス自体のデジタル化にも着手していた経緯がある。大都市圏外に立地する同大にとって、オンデマンド型の講義が可能なことは、非常勤教員の確保にも一役買ったという。同様に、アルバイト等で多忙の学生にとってもメリットが大きかった。こうした動きがあったからこそ、「教育におけるテクノロジーの意味を教職員が理解できており、迅速に一連の改革を進めることができました」と関沢氏は述べる。では、今回の事業領域である介護業界には、デジタルに関してどのような課題があるのか。介護現場で勤務した経験が長く、介護現場の実情や課題をよく知る金成氏はこう話す。「2000年に始まった介護保険制度は、約3年ごとに見直されます。法改正の方向性は介護報酬の加算に直結することが多いため、そうした情勢が現場に与える影響がとても大きい」。次回改訂は2024年だが、近年は「科学的介護情報リクルート カレッジマネジメント239 │ Jan. - Mar. 2024高等教育研究開発副センター長兼電算室長 教授関沢和泉 氏健康福祉学部教授金成明美 氏による新たな価値創出データサイエンス(DS)教育の最前線東日本国際大学は、2022年文部科学省「デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業DXをけん引する高度専門人材育成事業」(産業DX)に「地域の介護福祉DXを推進できる人材育成プラットフォームの構築」が採択された。その背景や趣旨について、高等教育研究開発副センター長兼電算室長の関沢和泉教授、健康福祉学部の金成明美教授にお話を伺った。同大学は、2021年3月文科省「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」(Plus-DX)に採択されたのを皮切りに、同8月にはMDASHリテラシーレベルに認定、2022年に冒頭の産業DX、2023年には「成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援」(支援事業)にも採択される等、文科省のデジタル文脈の外部資金を順調に獲得している。これは法人の中期計画の「教学改革計画」にも明記されている方向性だ。「本学のような小規模大学が、現在求められる水準の教育の高度化を人口減少のなかで達成するためには、外部資金獲得にも積極的に取り組む必要があります」と関沢氏はその意図を説明する。そもそも1995年の開学時に設置した経済学部に置いた学科の1つは経済情報学科で、社会で需要の高いコンピュータに強い人材育成を目指していたという。1995年といえばWindows95が発売され、OSのデファクトスタンダードとなったころである。翻って現在、今後を見据えると、デジタル社会で生きていくためのスキルセットであるデータサイエンスやAI・情報活用能力等に改めて向き合う必要がある。近年の契機として大きかったのは2016年AP事業に採択された事例report_15 東日本国際大学多様なデジタルアプローチで介護福祉の現場を変革する

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