74専門領域と技術をつなぐコーディネーター人材の必要性デジタルに軸足を置いて介護教育を高度化するシステムの整備」が叫ばれており、そこで現場のデジタル化が盛り込まれることを見越して動く必要がある。昨今では自治体によって人手不足解消や負担軽減のための介護ロボット導入補助金制度も始まっており、どういったロボットならば助成されるのかといった情報をキャッチアップする必要もあるという。また、金成氏は介護保険前夜とも言える1999年には夜間帯派遣のリーダーを務めていたが、出退勤の管理が留守電の転送サービスだったり、ケアマネジメントプランのアセスメントが手作業だったり、保管義務のある5年後まで保存する書類のために、保管庫も兼ねて大きめな事務所のフロアを借りなければならなかったりと、改善すべき点が多く目についたという。「既に業界で人不足が始まっていたころだったので、早々に業務プロセスを見直したり、必要なIT化を行ったりする必要があるのに、旧態依然のやり方が続くことに違和感がありました。でもいつか、こうした業務がデジタルに置き換わり、そうしたことに強い介護職でなければ立ち行かなくなることは明白だったのです」。持続可能な介護環境を守るには、テクノロジーに明るく、現場にも精通した人材が必要だ。今回の事業スコープはまさにそこである。採択事業の目的は、「介護DX2.0を実現するための基礎的な数理・データサイエンス・AIの知識を身につけたうえで、介護分野特有のロボット技術、生体指標測定を理解し、プランニングできる次世代介護福祉士を育成する」ことである。先に挙げた業界課題に対し、介護とテクノロジーの双方を理解したうえで、現場のDXを推進できる人材を育成・輩出することを目指す。合わせて、国や自治体の方向性を見据えて現場のDXをコンサルティングできる体制作りも志向している。例えば、「どの種類のロボットを導入すれば省力化でき、さらに介護加算がつくのか」「この事業所に合うのはどのデジタルデバイスなのか」といった現場に即したアドバイスや、介護保険制度を踏まえた適切な提案業務ができるコーディネーター人材だ。現状こうしたことをできる人材は稀有であり、属人領域でもある。担い手の人数を増やすと同時に、属人的・暗黙知的な領域を可視化・形式知化することも必要だという。「4年後に卒業する学生が現場でリーダーシップをとれるためには必要なことです」と金成氏は述べる。また、これは介護業界に限った話ではないが、熟練者のスキル伝承という意味でも、デジタル導入によるパフォーマンスの可視化は大きな意味がある。「ちょっとした目線で何を見ているのか、腰を痛めないためにどういう体の使い方をしているのかといったことは、これまでOJTベースで修得するしかありませんでした。でも(以下に挙げる)生体指標測定によって、そうした習得も可能になります」(金成氏)。勘や経験則をどう可視化できるかが課題である。具体的には、以下3つを柱とした教育開発を地域と連携して進めることで、介護福祉DXを推進できる人材育成のためのプラットフォーム構築に貢献することを目指す。①ロボット研修の高度化今後欠かせないロボット技術(センサー系・駆動系・知能制御系)を実際に使った研修と、それらをベースとした介護DX導入のPBLで、単なる機械化ではなく、サービスの質向上につながるようなかたちで「個別最適化された介護を実現」するために技術を導入しDXを進めるマインドを育成する。
元のページ ../index.html#74