学ぶと働く82ゼミ教育を通じて、多様性を受け入れるマインドを育成専門の横串を通す「学部横断型ゼミナール・プロジェクト」幅広い力を育むリベラルアーツ&サイエンス教育センター武蔵大学の教育上の特徴は、1年生から4年間、全学生がゼミ(ゼミナール)必修ということだ。1つのゼミが平均13人という少人数制。1950年代から続くこの教育法について、高橋徳行学長は「本学の建学の精神の1つである『自ら調べ自ら考える力ある人物』の養成に適したものとして、ゼミ教育に重点を置いたと思います」と言い、そこに加わる現代的意義についてこう語る。「大学のカリキュラムは、4年間は科目を変えられません。一方ゼミは、先生方の専門分野が固定でもその中での自由度が高く、時代の変化を捉えた内容で密な少人数教育を展開できるのが強みです」。また高橋学長は、ゼミ教育、少人数教育を通じて育みたいのは「世界を生き抜く力」だという。その実体は「多様な考え方を受け入れるマインド」だ。「大学にはさまざまな専門分野を学んだ学生がいますから、他の専門の人と話すときに、心をオープンにして耳を傾けることが必要だと思います」。必修ゼミの内容や教授法は様々だが、共通するのは、「学びの継続性の担保」だ。担当教員の指導のもと、卒業論文・卒業制作などの最終成果物に向けて学びを積み上げていく。「何か1つ、大学で何を勉強したのかが残る、ゼミならではの体系になっています」。ゼミ教育は、継続的に専門を学んで、その専門の中で意見を交わすなかでさらに専門性を深めていける良さがある。しかし高橋学長は、深さだけでなく幅広さも必要だという。「社会に出たときには、1つのプロジェクトにいろいろな分野の専門家が集まる。違う専門を学んできた人たちと会話して課題解決を目指す、幅広い能力が絶対に必要になります」。そこで、「学部横断型ゼミナール・プロジェクト」(横断ゼミ)が、2007年度経済産業省の「産学連携による社会人基礎力の育成・評価事業」採択を受けて本格的に始まった。産学連携のもと企業から課題をもらい、経済、社会、人文、国際教養の4学部混成のチームで解決策を提示するPBL型の授業だ。選択科目で、履修者数は20人前後という。例えば、企業分析の課題に対して、経済系※1の学生は、いわゆる経営分析を行う。そこに社会学部の学生が企業と社会との関係という視点を加え、人文・国際系※2の学生が企業の持つ文化や歴史の重要性を指摘する。1つの学部で分析するより、広く深い成果が得られるという。「学部の専門性によって物事へのアプローチが違うので、最初はぶつかり合う。それを乗り越えて、1つのゴールに向かって協働作業をするのが、このゼミです。そういう経験を、学生時代に1回はしておく必要があると思います」。高橋学長は、必修ゼミや横断ゼミで身につくものを「深く考え、しつこく考え、コミュニケーションをとりながら考える能力」と表現する。また「少人数のゼミでは、自分の意見を話学長高橋徳行 氏42をつなぐ世界で生き抜く力を育む「ゼミの武蔵」武蔵大学
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