カレッジマネジメント240号
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Contribution大学職員の力を最大限に活用していくために何が必要であろうか。ここでは東京大学大学経営・政策研究センターが実施した2つの調査(表1)から現状の課題とその解決の方向性を考えたい。大学職員が期待される役割を果たすためには、個々人の能力を高めるSD(Staff Development)の視点のみならず、職員組織全体の能力を高めるOD(Organizational Development)の観点が重要である。個々人の能力向上が必ずしも組織能力の向上につながるとは限らず、組織を意識した議論が必要である。組織として目指す姿は様々にあり得るが、ここでは「将来の経営を担う人材が育っている」と「職員の仕事は大学の発展に貢献している」の2点に着目する。「職員調査」では、「そう思う」「ある程度そう寄稿10実施時期調査対象回答数(回答率)1983名(43%)(注)詳細はセンターのWebサイトを参照されたい(https://ump.p.u-tokyo.ac.jp/crump/cat77/cat87/)全国大学職員調査(職員調査)2021年2月全国の国公私立大学の事務職員(週5日以上勤務)1544の大学の本部・学部4632名思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」の4件法で尋ねたが、「将来の経営を担う人材が育っている」に肯定的に回答したのは26%、「職員の仕事は大学の発展に貢献している」に肯定的に回答したのは76%。改善の余地が少なくない現状であるが、何がその成否を分けているのか。個々人の努力や感じ方でなく、組織としての取り組みや雰囲気の影響を検討することが必要と考え、ここでは人事、職場の雰囲気、成長機会、業務等の影響を分析した(表2)。「将来の経営を担う人材が育っている」かに最も大きな全国大学事務局長調査(事務局長調査)2023年2月全国の国公私立の大学事務局長 766名369名(48%)東京大学大学院教育学研究科教授。博士(教育学)。産業技術総合研究所特別研究員、東京大学大学総合教育研究センター助手、助教、東京大学大学院教育学研究科講師、准教授を経て、2021年より現職。専門は高等教育論。主な著書は『日本の大学経営-自律的・協働的改革をめざして』『学長リーダーシップの条件』など。東京大学 教育学研究科 教授表1 調査概要「将来の経営を担う人材が育っている」か「職員の仕事は大学の発展に貢献している」か共に大きな影響があるのは“人事”1求められる職員像とその規定要因両角 亜希子氏─多様な声を活かした経営へ─人的資本としての大学職員

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