カレッジマネジメント240号
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20職員の現状岡田 先に述べたように、われわれ大学職員の強みは、経年での大学全体や競合校の動きなど、エビデンスベースで自大学が抱える課題を把握できていること、そして文教政策の動向にも通じている点です。が、本質を知り、今を懐疑的に見て前例踏襲せず、常に近道を考えることが大事です。私はこれまで経営企画部門の人材をどう育成していくか色々と思案しトライしてきました。まず、職員に期待される能力・スキルとして、日々の業務で習熟できるデータ・サイエンススキルや法令解釈、大学設置基準の理解等は、あって当然の「所与の要件」だと思っています。これをベースとしながら、さらにこれからの時代に求められる能力は、「前例のない事業への挑戦」「巻き込む力」「突破する力」だと考えています。人間は本能的に変化を恐れますから、改革を進めるとハレーションを伴います。しかし、もっと良くなるという期待感に働きかけ、意思決定に影響力の強い賛同者(上位者)を巻き込み、説得して共感を得て、突破することでイノベーションが起こるのです。2015 年に本学が農学部を新設した際も、当初は私たち職員を中心とした小さな提案から始まりました。最初は反対の声や否定する意見もあったのですが、「国公私立合わせて35年ぶりの農学部新設。だからこそ挑戦しよう」と担当副学長を巻き込み、様々なエビデンスを示していくうちに大学全体が可能性の萌芽を感じ、意思決定に繋げることができました。何度も挫けそうになる中で、「突破しよう」という思いを維持できたのは、その先に希望を見いだすからであり、企画の担い手には俯瞰的視座で長期的に先を見通す力も求められます。さらに変化に柔軟に対応し、愉しむ心と乗り越える意志を持てるかどうかが大事なポイントです。「乗り越えた」という成功体験が自信に繋がり、その後の職員人生にプラスのスパイラルとして働いていくと考えています。これからの時代に求められる能力は、「前例のない事業への挑戦」「巻き込む力」「突破する力」。それがイノベーションへとつながる。(岡田)――求められる職員像と能力・スキルを伺いましたが、職員の方々の現状をどのように見ていらっしゃいますか。それから管理職からの「大学側」という言葉には違和感を覚えます。教職員が大学側そのものとなり有機的組織となることは本学にとって理想的なことだと思います。ゆとり世代やZ世代は、われわれとは就業観や価値観が大きく違っていて、仕事への依存度が極めて低く、何のために働くのか、自己実現を仕事でいかに果たすのかに目が行かないことに世代間ギャップを感じます。あとは優秀な人材の採用が本当に難しくなっています。また、われわれの業界の中でも流動性が高まっていて、待遇つまり給与の良いほうにどんどん移っていくのです。ここ数年の離職者の多さやメンタルヘルスの問題もあり、意欲がある者も目標設定ができずにモチベーションや能力が低下して、ミスも多くなっています。鈴木 本質を見抜き、正しく課題を設定する際に、重要なのは当事者意識だと思います。日々の業務に追われていると、実際には気が回らないこともあります。しかし、なぜそれをやっているかが分からず、ただ漠然と去年と同じことをしていては、業務の効率化も合理化もできません。やはり「自分ごと化」して業務を見つめることで、無駄なものや改善すべき点等が見えてくると思うのです。本田 私は若年層の意識と行動変容から来る、モチベーションと組織エンゲージメントの低さが気になっています。ちょっと前までは就業3年目までの離職率の高さが社会問題になっていましたが、今は中堅の世代まで拡がっていると思うのです。

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