カレッジマネジメント240号
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21改革を進めるうえで必要な能力やスキルをどのように育成しているか本質を見抜き、正しく課題を設定する際に、重要なのは当事者意識。「自分ごと化」して業務を見つめることで、無駄なものや改善すべき点等が見えてくる。(鈴木)特集1岡田 本学でもここ10 年くらいで、心が折れやすい人が多くなってきました。最近ではコロナ禍で疲弊したことも一因にあるかもしれません。われわれの世代は多少辛くとも、仕事による満足度とやりがいが自覚になり、帰属意識やエンゲージメントが高まるということが無意識に醸成されていました。しかし、時代の変化によって、そうした価値観を押し付けることもできず、結果としてストレス耐性の面で、組織全体が弱体化しているように見えます。鈴木 ここ数年は、創造性の高い人を求める傾向が強く、採用説明会では「単なる事務をこなすだけの方は求めていません」と言っています。すると実際は受けてこないケースも多い。志願者は減っても本当に欲しい人に入職して頂きたいのでこれはこれで良いと思っています。ただ気づくと企画系の人材に偏っていたので、今度は処理能力に優れた人を採用しました。バランスは必要だと思います。加えて、人が疲弊しているという意味では、現状は残念ながら「ヒューマン・リソース(人的資源)の消耗」になっていて、「ヒューマン・キャピタル(人的資本)の活躍」への転換が実現できていません。――大学改革を進めるうえで必要な能力・スキルとして、当事者意識、エンゲージメント、突破力といったキーワードが挙がりましたが、これらを具体的にどのように育成していますか。それから、若い世代の職員には、成功体験を重ねて欲しいと思っています。小さなところからスタートし、次はもう少し大きな仕事を任せてもらえるようになり、パトロン(組織で権力を有する支援者)ができて、やりたいことがどんどんできるようになる。そうなれば、仕事が楽しくなってきます。本田・岡田 われわれが最終的にそのパトロンになるんですよね。鈴木 そうなんです。例えば、ちょっとした工夫で無駄を省いて、みんなが早く帰れるようになった、そんな小さな成功を積み重ねるとお二人のようなパワーのある味方ができ、スケールの大きな改革にチャレンジできるようになります。本田 大きな改革は全体を巻き込まないとできないので、個々の能力を高めると同時に、組織全体のパフォーマンスを底上げしていく必要があります。こうした考えから、私は2つの方針を打ち出しました。また、いきなり大学ごと変えようとすると途方もなく感じるので、気の合う仲間2~3人でもいいのでまずは企画・行動することです。そうすれば3・4・3の法則で、3の推進者が増え、4の層が共感者となれば、大きなムーブメントになるという経験を何度かしました。1つ目は「タレント・マネジメントからパフォーマンス・マネジメントとの併用」です。かつて、優秀な人材を企画部門に集めて、機関車論理で引っ張ろうとしたのですが、回ったのは最初だけでした。これからの厳しい環境の中では、いわゆる2・6・2の法則の上位2割のタレントに任せるだけでなく、6割の中間層のモチベーションとエンゲージメントも高めて、一人当たりの労働生産性を上げ全体を底上げする、両方の併用が重要だと思っています。2つ目の「人を使う組織から人を育てる組織へ」は、私が法人事務局長になった時に所信で唱えた方針でもあります。われわれは人を育てる業界であり、人に対してより資源投資しなければいけなかったのに、人を使って、目の前の仕事をさせてきただけでした。次世代を育てるという意識が希薄だったから、職員とのギャップが出てきてしまったのだと思います。そこで5つの具体的施策として、①キャリアパスの明確化、大学と人的資本経営

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