カレッジマネジメント240号
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22職員の能力を育成するうえでの障壁や課題感②研修内容の見直し、③若手育成機関「文教Mirai塾」の設置、④メンター制度の導入、⑤1on1ミーティングで組織イノベーションを図ろうと思っています。①の目的は、マルチタスクをこなせる人材育成と適材適所の創出です。ジョブローテーションを厳格運用し、管理職になるまでに教学・管理に偏ることなく3部署以上を経験することでゼネラリストに育てていきます。②では研修目的と必要なスキルを明確化し、ITスキルとビジネススキルを徹底的に磨きます。例えば階層研修なら入職3年目までに秘書検定3級とMOS取得を義務化し、受験料等は支援します。③④は若手育成支援策で、③の文教Mirai塾は、やる気のある職員を対象に、他者との協働で成功体験をつけ自信を持たせることが狙いです。④は若年層の離職を止めるのが目的です。部署を超えた先輩等のメンターによる斜めの支援で、研修やOJTでは賄えない心理面のサポートをします。⑤は1対1でリーダーとビジョンを共有しながら、個々の職員のマインドセットや課題意識を把握する場です。事務局長になってから3年間で管理職との1on1ミーティングを2回行い、来年は一般職でも行う予定です。管理職60人と30分~1時間対話すると2~3カ月はかかりましたが、一人ひとり手間暇かけて丁寧に対話して育てていかないといけないと思っています。鈴木 本学は学内研修や海外研修については充実していて、人事評価には目標管理制度を採用しています。5項目の個人目標とウェイトを自分で設定し、自ら達成度合いをA~Dで評価して、上司が個々の職員に1対1でフィードバック面談を行います。岡田 本学は勤続年数や資格別にSD 研修制度がとても充実していて、学内の業務やスキルに応じたもののほか、メンタルケアや学生支援、コミュニケーション研修、海外研修、学外団体主催研修等、本当に様々な制度があります。しかし、われわれが、後進や現場部局の意欲、危機意識、担い手としての自覚に火をつけることで、必然的に大学職員の改革力が育まれ、スパイラル・ストーリーが機能していく。(岡田)岡田 人材育成上の障壁や課題には、外的要因(学外)と内的要因(学内)があると考えます。本田 私もその「事務」という言葉への捉え方には同感です。職員の役割が高まっているのは、まさにそういう大学経営全体の問題があるからです。確かに教員と職員の両輪にはなりましたが、車輪の大きさが違うんですよ。鈴木 私も事務職員という言い方には、ずっと違和感を感じていますね。各業務に応じた「部分最適」としての能力育成は出来ていても、大学改革を進めるうえで必要な能力やスキルの育成には繋がっていない。中長期計画と人材育成方策が「経営戦略」としてシンクロしていないと感じています。――岡田さんから、人材育成が改革に必要な能力やスキルの育成に繋がっていないというご指摘がありましたが、職員の育成において何が障壁や課題となっているのでしょうか。まず外的要因として、大学職員の法令上の名称が「事務職員」であること。これが潜在意識に作用し、事務は教員の補助的立場と自ら認識し、能力育成の限界を生んでいると思います。過去に大学行政管理学会で副会長を担っていた時代に、学校教育法の定めを「大学職員」に変えられないかと文部科学省に交渉しましたが諸々の制約や事情があって実現しませんでした。しかし、大学職員の地位が法的に向上すれば、意欲や責任感、改革の担い手としての当事者意識の向上に繋がり、最終的には組織エンゲージメントが高まり、大学改革のムーブメントに向かうと私は考えています。

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