カレッジマネジメント240号
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23特集1岡田 また、内的要因は先ほど述べた、学内に多様な研修制度があるものの、改革を進めるうえで必要な能力の育成には結びついていないという点です。現場は業務多忙を理由としてOff-JT型の人事研修に積極的ではなく、また、資格・年齢別の一律的な研修ばかりで、優れた人間をより伸ばす研修や、職員個々の内発的動機付けの発揚につながる取り組みができていません。特に育成効果が高いのが他流試合、つまり交流経験です。同業他者と交流することで、自大学のレベルを客観視でき、大学職員としての自らの能力やパフォーマンスを相対化することができるからです。しかし多くの人間が外に出ていこうとしない。これでは俯瞰的視座を涵養することができません。本田 私も立命館大学の大学行政研究・研修センターに1年間通い、多くのことを学びました。日本私立大学連盟は階層ごとに研修がしっかりしていますよね。岡田 私大連の研修は他大学との人的ネットワーク構築に繋がります。大学行政管理学会も年間を通じて全国でテーマ別、地域別に研究会が開催されており、これに参加することも刺激があって意義深いと考えます。本学も以前は、私大連や大学コンソーシアム京都等の集合研修に職員を指名で必ず行かせていたのですが、最近はそうでもありません。人を育てて初めて組織は強くなるわけですが、業務多忙を理由に現場が人を出せないというのが実態のようです。多忙だからこそ未来の世代を育てる、米百俵の精神が大事なのですが。鈴木 うちは私大協加盟で研修の機会もありますが、職員が自発的に外に出ていかないという思いは大いにあります。私自身も学外の偉大な先輩方を見てマインドチェンジしたので、そういう場を知らない若い人には特に経験して欲しいと考えています。われわれ教職員が自大学を愛する気持ち、ロイヤリティが大切。そのために上層部が果たすべき役割は、自分達の目指す方向性をビジョンとしてはっきり示すこと。(鈴木)岡田 今、本学において職員人材育成の基盤にある考え方は「ボトムの底上げ」です。同世代や同一資格の者が集団で同じ研修を受講する、一律的な運用になっています。これも重要です。組織力の向上に繋がっており、決して否定されるものではない。しかし、それ以上に力のある人を伸ばすことはできない。そして、その人は逆に努力をしなくなってしまうというマイナス作用も生じ得ます。そこで大学間連携を推進し、学外交流を活発に行なっています。例えば高崎健康福祉大学との連携は、地元ではライバル法人という認識もあり、衝撃的だったと思うのですが、若手中心に職員同士で研修を企画し、学生交流も行っています。愛知東邦大学とも職員同士の1週間の交換留学をしてきました。大学間だけでなく、違う業種との交流もしています。私は広報から教務に移った時に、外部と連携するともっと面白くなると思い、面白法人カヤック、電通、アドビ、楽天といった企業に飛び込んで連携がスタートしました。カヤックからは当事者意識を、電通からはクリエイター脳を業務に生かす等、同業ではないところから学ぶ効果は大きいです。高校との高大連携を通じても、同じ人材育成というところで課題の共通点が多いことに気づかされます。そこからの課題感で言うと、高校現場もそうですが日本は全国一律に誰にでも通用する汎用的な教育システムをやろうとします。ですが一口に大学職員といってもレベル感が全然違うので、同じ研修でも響くものと響かないものがあると思うのです。意識の低い職員には研修が必要ですが、自分ごと化が進んでいる職員を管理しようとしてはいけない気がするのです。一定レベルに達した職員に対しては、管理職もマネジメントするというバイアスをアンラーニングしないといけません。こうした現状を改め、VUCAの時代に対応した組織文化へと変えていかなければならないが、できていない。もう一つ言うと、本学では組織構成員の同質化が進み、皆大学と人的資本経営

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