カレッジマネジメント240号
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24今後の職員の力を高めるための方向性本田 いわゆる「生意気な人」がいないんですよね。岡田 そう、とんがった若い人材がいない。随分と前、当時の人事課長に全員一律研修だけではなく、できる人をより伸ばすオナーズプログラム的な研修もやらないかと相談したことがあります。しかし、大学が実施する人事研修は一律でないと公平性の観点から問題があると断られました。彼の立場は板挟みになっていることも分かったので、私は個別に声をかけて賛同してくれた若手を集め、個性を際立たせ、自らの考えに基づき物言う人材を育成すべく私塾「龍谷未来塾」を主催し、約12 名の若手職員を徹底的に鍛えました。今では修了生の中から管理職が出てくるようになりました。しかし、手のかかる人材育成に個人で取り組むには負担が大きく、持続可能性の面で限界が生じ、現在は休眠状態になっています。本田 本学も育成の施策は行っていきますが、現状でもお話しした優秀な人材の確保、つまり採用が最も大きな課題として残っています。現場では労働力不足が常々言われていて、優秀な人材の確保が難しいのであれば、今いる人材のリソースを上げていくしかありません。人的資本経営が注目されている一因はここにもあって、人に対して投資して企業価値を高めることが優秀な人材確保に繋がるという点優秀だが同じようなタイプの人間が増えているように感じます。あくまでも私見であり事実ではないかもしれない。しかし、多様な人間がいる中で「個性」を活かし組織は強くなっていくものですが、現状はむしろその逆で、賢くスマートで協調性のある人間が増えている。人的資本経営におけるダイバーシティの実現は国籍や性別だけでなく、個性の面からも対応すべきであり、大きな課題だと感じています。危機に際しては、こうした個性的な人間が突破力を発揮することから、人事の担当者も一所懸命に取り組んでいますが、「尖がった人間」が育っていない。経営戦略を達成するためには、学園ビジョンと職員個々のMyパーパスをすり合わせ、組織の目標達成と自己就労観の実現を一緒に行っていくことが、職員の意識改革、ひいてはエンゲージメントを高めていく。(本田)は、企業も大学も全く同じです。――ここまで企画人材を中心に職員力育成についてお話し頂きましたが、最後に今後の方向性をお聞かせください。われわれの業界は、教員と職員、教学と経営と複層化していて、意思決定が複雑です。そういった中で物事を実行するには、ネゴシエーション、根回しが非常に重要で、皆さん苦労されているのだと思います。だから交渉力は率先して身につけて欲しいし、交渉で相手を説得するためには、日々の仕事の信用性を高めることも必要になります。これを実現するための処方箋としては、まず先に述べた他流試合を進めていくことです。異業種や行政・他大学との人事交流は刺激があって新たな気づきもあり、組織文化の違いや意思決定アプローチも学ぶことができます。2つ目はエフォート型の働き方改革です。ライン業務だ本田 企画能力は企画部門だけではなくて、どこの部署でも必要な能力だと思っています。時にはResearcher(情報収集者)であり、Planner(企画者)やPresenter(提案者)でもありますが、一番重要なのはNegotiator(交渉者)とDoer(実行者)であることだと思います。プランを立てて終わりではなくて、実際にやらなければ何の意味もありません。岡田 従来、大学職員を極めることは、ゼネラリストかスペシャリストになることでしたが、これからはその両面を高度化したプロフェッショナルを目指すべきだと思います。それぞれが高度な専門性を持ちながら、内発的動機に基づき、高いレベルでの汎用性を備えたプロフェッショナルになることが重要だと考えます。

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