カレッジマネジメント240号
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25特集1(文/能地泰代 撮影/平山 諭)けでなく全学の課題に取り組むようなミッション業務に、例えば 6:4や7:3の割合でエフォートに携わることで、俯瞰的視座や問題発見能力が涵養されます。3つ目は若いころからプロジェクトを任せることです。様々な苦労を伴う経験学習を通じて、①職員コンピテンシー、②批判的思考力、③俯瞰的視座、④協働する力(チームワーク&リーダーシップ)といった4 つの自我が育まれると思っています。そして、最後にはやはりパッション、情熱が必要です。大学改革とは「パッションと信念をもって夢を描くこと」であり、パッションこそ大学改革のコア・エンジンとなるものです。アメリカの哲学者W.A.フォードの言葉に“The great teacher inspires.”すなわち「偉大な教師は、生徒の心に火をつける」※1とあるのですが、まさにわれわれの世代が大学改革の「灯火」となり、後進や現場部局の意欲、危機意識、担い手としての自覚に火をつけることができれば、必然的に大学職員の改革力が育まれ、それが次の世代へと継承されるスパイラル・ストーリーとして機能していくと考えます。そのために上層部が果たすべき役割は、自分達の目指す方向性をビジョンとしてはっきり示すことです。それを旗印に、職員が各々の当事者意識で最善を考えてゴールに向かうことができれば、マネジメントしなくても同じベクトルに向かって生き生きと働けると思います。そうすることでブランドが確立し、募集に繋がれば、さらにロイヤリティが上がるという好循環が回って、強い大学になれる鈴木 最近の上層部と話していると、人材育成をどうするかがいつもメインになってきます。今後は岡田さんのおっしゃるように内発的動機付けが重要で、外発的動機付けではいつか破綻が来るし、優秀な人は条件の良いほうへ移行してしまいます。われわれ教職員が自大学を愛する気持ち、ロイヤリティが大切だということを改めて思いました。※1 寺㟢昌男『主体的学び7号』特集 教えることをやめられますか(東信堂2021)本田 今後、経営環境がますます厳しくなる中で競争的優位に立つためには、経営戦略とその経営戦略の実現が重要になってきます。のではないでしょうか。発展途上の地方の大学としては、内発的にみんなでやっていくことを意識していきたいと思いました。そのための2つの方向性として、1つ目は人事施策を戦略的に行うこと、言い換えると経営戦略と連動した人事施策が必要だと思います。優秀な人材を確保し、能力開発で個々のパフォーマンスを高め、適材適所に配置する。これを意図的かつ計画的に行うことが、経営戦略の担い手としての職員を最大限活用することになります。2つ目は職員の意識改革です。経営戦略を達成するためには、学園ビジョンと職員個々のMyパーパス(志や存在意義)をすり合わせ、組織の目標達成と自己の就労観の実現を一緒に行っていくことが、職員の意識改革、ひいてはエンゲージメントを高めていくことに繋がると考えています。ですから、1on1ミーティングで経営戦略を職員一人ひとりに丁寧に伝えながら、個人のマインドセットを把握して、自分ごと、自分のMyパーパスに結びつけてあげることが重要だと思うのです。学生募集もそうですが、今はマスの対応ではなくて、個に対して丁寧に対応しなければいけなくなった、そういう時代なんだと思います。さらにいえば、今なぜ人的資本経営が着目されているかというと、人材不足で人材リソースを高めるのも一つあるのですが、やっぱり経営戦略や事業イノベーションという創造的な部分は人にしかできないからだと思うのです。企業も大学も生き残るために、もう一度「人」を見つめ直して、大切に育てていこうということではないでしょうか。大学と人的資本経営

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