カレッジマネジメント240号
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UAとの協働31URA等のエキスパート人材を組織化事務職の専門職化も重要なテーマ特集1・積極的なリクルート活動産学連携ネットワーク同窓会ネットワーク等・博士向けのJOB型インターンシップ育成・シニア高度専門人材との 協働によるOJT型育成・社会人大学院進学制度・国内外他機関研修制度・UAのへや(有識者懇談)等昇任試験大学執行部による採用・昇任試験制度大学院(博士/修士)修了の構築・実施。同大学の理事・副学長でもある川端和重室長は一連の取り組みの背景や目的をこう解説する。「従来、産学連携・地方創生の多くは教員が個人レベルで取り組んでいました。しかし、教員には事業化ノウハウがありませんから、成果にはどうしても限界があります。より実効的、かつより大きい規模で大学の研究成果を事業化しようとしたら、大学として戦略的・組織的に取り組む必要がある。そこで本学でもエキスパート人材の採用・配置を進めてきましたが、こうした人材が様々な部署に散在している状況が続いていました。このエキスパート人材を組織化して、全学的な観点からより戦略的に機能させていこうというのがUA室設置の狙いです」課題の一つが統一的な人事制度の構築だ。エキスパート人材は、教員と事務職の中間のような役割を担うため、現状では特任教員として採用されているケースもあれば、職員として採用されているケースもある。担う役割は共通していながら、人事制度や評価制度は教員と職員とで異なることが組織化を図るうえでのネックになる。「現状のままではエキスパート人材としてのキャリアアップを考えようにも将来像が描きづらいという問題もあります。ですから、エキスパート人材を『第3の職』として確立し、独自のキャリアパスや人事評価制度を構築していきたい。大学では前例がない取り組みなので大変ですが、この半年間のPEAKS事業の間にかたちをはっきりさせて2024年度には制度化したいと考えています」。もう一つの解決すべき課題はエキスパート人材の育成。エキスパート人材には、大学院レベルの学問に関する専門性と事業を企画・マネジメントできる実務能力が求められる。多くの人の間で調整や交渉も行うため、コミュニケーションスキル等も必要だ。学問的な専門性に関しては大学で養成できる力だが、実務能力に関しては、企業等で実際に該当する業務や経営そのものを経験していることが重視されてきた。しかし、この条件に該当する優秀な人材は希少で各大学・研究機関で奪い合いになっている。「ですから、今後は内部で育成することが重要になります。そこで、PEAKS事業で進めていることの一つが事務職の複線型人事トラックの構築(総合職と専門職)です。さらに事務職からエキスパート人材(UA職)への転籍試験制度の構築等の連携の制度化をどのようにしていくかはこれからの課題ですが、現状はUA室で立ち上げたタスクフォースに事務職からも参画してもらい、実務を通してスキルアップしてもらうことを考えています。今までの事務職とは異なる世界観に接して、もう一段上がっていこうという気持ちを醸成することを重視しています」(図2)エキスパート人材は取材時点(2024年1月)で16人。川端室長は、「今後は採用・育成を進めて50人規模程度まで増やしていきたい」と構想を語る。評価昇任採用試験図2 UA職の魅力化/事務職の魅力化と高度化大学と人的資本経営(文/伊藤 敬太郎)理事・副理事等としてフルタイム大学経営者に獲得相当の実務経験者主幹UA主幹UA上席UA上席UA上級UA上級UAUAUA総合型特化型大学執行部スクリーニング主に博士がイノベーターとして活躍採用試験スキルの習得 TF への参画転籍試験制度育成制度・大学院進学制度・資格取得制度・他機関派遣制度・海外業務経験・経営力強化SD 部長課長副課長係長主任担当専門型部長課長副課長係長主任担当総合型大学執行部スクリーニング大学新卒経験者複線型トラックの構築UA職との協働育成制度の実質化事務職総合型・複数の部署を経験し、大学経営の幅広い視点を磨き、適性に応じて幹部候補として育成専門型・数年間のOJT後に、特定部門の専門性を磨く方向で育成

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