カレッジマネジメント240号
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Editor-in-chief’ Perspective2020年に経済産業省が「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会 人材版伊藤レポート」(以下、レポート)を発表した。レポートでは、『人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方』について説いており、これが「人的資本経営」と言われている。2021 年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、人的資本に関する記載が盛り込まれており、企業ではガバナンス改革の文脈からも、人的資本経営が捉えられている。レポートでは、企業や個人を取り巻く変革のスピードが増す中で、企業の競争力の源泉は人材であり、これを「人的資本(Human Capital)」として、経営戦略と人事戦略との同期が必要だとしている。これまでの人事・人材をめぐる議論は人事部門の世界に終始していたとして、「管理思考」から「経営改革・人材変革・企業文化変革」の必要性を説いている。以前、あるセミナーで海外のベンチャー投資家が、投資する企業の判断基準について「グッドプロダクトより、競争力の源泉として、人材を人財(Human Capital)と捉えるあらゆる部署で求められる『企画人材』編集長の視点32グッドチームを優先する」と話していたのが印象的であった。プロダクトは、変化の激しい時代にはすぐに陳腐化してしまうが、人材や組織文化こそが投資に値するということであった。まさに、従来の日本で捉えられていた人材=人件費(コスト)という考え方から、人財=資産という考え方に切り替えることが重要になる。大学の人材、特に職員について考えてみたい。以前、カレッジマネジメント226号(Jan. - Feb. 2021)で、職員のミドルマネジメント層に関する学長調査を実施した※1。その際の質問項目「職員が期待される役割を果たすために必要な能力と現状評価」において、評価が高かったのは「業務に関連する知識」「的確かつ効率的に業務を処理するスキル」であった。一方、評価が低かったのが「新たな課題に挑戦する姿勢」「企画構想力や計画策定能力」である。これらの資質・能力はまさに、『企画人材』に求められるものと合致している。企業と同様、大学も大きな変革の時代に入っている。変革の時代に求められるのが、新たな戦略やアイデアを生みリクルート進学総研所長リクルート『カレッジマネジメント』編集長 小林 浩「管理思考」から持続的な価値創造に向けた「組織文化変革」へ~ビジョンや経営戦略と人事戦略は同期しているか~

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