カレッジマネジメント240号
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34理事会型は、理事会を理事選任機関とするものである。これまで、多くの学校法人が理事会型を採用してきたものと思われる。しかし、経営者への規律付けの観点からは、経営者以外の者に選解任権限を付与しておくことが決定的に重要であり(前記2(3)参照)、この点で、理事会型はガバナンス上の問題を抱えていると言わざるを得ない。また、理事会型は、理事間の派閥争いによって理事会が機能不全に陥る可能性が高いという問題もある。すなわち、理事会型以外であれば、たとえ理事間の派閥争いが発生したとしても、理事選任機関が有効に機能していれば、最終的には、一方の派閥に正当性があると認めた上で、理事の選解任権限を行使して反対派の理事を交代させ、派閥争いに決着をつけることができる。これに対し、理事会型の場合には、いったん理事間の派閥争いによって理事会が~各類型の問題点・留意点~(4)理事選任機関の各類型の検討(はたけやま・ひろし) 学校法人のM&A、産学連携、ガバナンスをはじめ、大学・教育分野の法務案件を主に取り扱う。2017年~2020年⽂部科学省高等教育局私学部勤務。2023年~大学教育質保証・評価センター認証評価委員会委員。TMI総合法律事務所 弁護士前号の内容はこちら:https://souken.shingakunet.com/publication/college_m/2024_RCM239/2024_RCM239_034.pdf機能不全に陥ってしまうと、理事の選解任権限を行使する主体がいなくなる結果、いつまで経っても派閥争いが収束しないという事態に陥ることとなる。実際に、理事間の派閥争いによって理事会が機能不全に陥ってしまった事例も少なからず存在している。このように理事会型はガバナンス上の問題を抱えているため、できる限り理事会型以外の類型を選択することが望ましいといえよう。次に、評議員会型・その他の機関型・混合型であるが、これらの類型には一長一短があるため、どの類型を選択すべきかは一概には言えない。各学校法人は、設立経緯や沿革、ステークホルダー等の固有の状況を踏まえ、独立性・安定性・正当性・多様性・運用可能性の視点を考慮しながら、自身にとって最適な類型を選択することが求められるだろう。検討の順序としては、正当性・多様性の観点から、学校法人の組織運営に高い関心を持ち、永続的な発展に貢献してくれるステークホルダーを探し出した上で、独立性・安定性のバランスを見ながら、理事選任機関の構成を調整していくことになろう。以下、評議員会型・その他の機関型・混合型の留意点を述べる。(いわた・いたる) 教諭として学校法人にて勤務した後、弁護士登録。教育・学校法人、人事労務、リスクマネジメント等を主に取り扱う。2020年~2023年⽂部科学省高等教育局私学部勤務。改正私立学校法の立案を担当。TMI総合法律事務所 弁護士イ 評議員会型・その他の機関型・混合型の選択前号(239号)では、前編として、ガバナンスの基本的事項について解説を行うとともに、今回の私学法改正において最も重要な改正項目である理事選任機関の制度設計についてあるべき姿と検討の視点を提示した。今号では、後編として、理事選任機関の各類型の問題点・留意点を示すとともに、1つのモデルを提示し、最後に、役員等の改選プロセスを中心として本改正に関する実務上の対応手順についても解説する。ア 理事会型の問題点稿寄理事選任機関の制度設計畠山大志 氏岩田 周 氏 後編2私学法改正を大学経営にどう生かすのか

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