カレッジマネジメント240号
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35(5)理事選任機関(評議員会型)の1つのモデル(6)理事選任機関の制度設計のその先(1)スケジュールイメージ評議員会型は、評議員会を理事選任機関とするものである。改正法においては、評議員の資格及び構成に関するルールが詳細に定められている。詳細は後記3(3)の通りであるが、①理事と評議員の兼職禁止(改正法第31条第3項)、②職員評議員は1人以上かつ評議員総数の3分の1以下(改正法第62条第3項第1号、第5項第1号)、③卒業生評議員は1人以上(改正法第62条第3項第2号)、④理事等選任評議員は評議員総数の2分の1以下(改正法第62条第5項第2号)といったルールは、理事選任機関の構成に大きく影響するため、特に注意が必要である。また、評議員会型を採る場合には、理事選任機関としての評議員会の運営についても、改正法上のルールが適用されるため、例えば、会議の1週間前までに招集通知を発する必要があること(改正法第70条第4項)、決議要件を加重又は軽減できないこと(改正法第76条第1項)等、若干手続に柔軟性が欠けることについて留意する必要もある。なお、理事選任機関の構成員に理事を加える場合には、理事と評議員の兼職禁止の関係で評議員会型ではこれを実現することはできないため(改正法第31条第3項)、その他の機関型か混合型を採る必要がある。その他の機関型は、理事会や評議員会とは別に「理事選任委員会」といった新しい機関を創設し、理事選任機関とするものである。新しい機関には、評議員会の規制(前記ウ参照)は及ばないため、理事を理事選任機関の構成員に加えるなど、柔軟な制度設計が可能である。他方、理事会及び評議員会に加え、新しい機関という3つの機関を運用しなければならないため、管理コストが増大するというデメリットがある。混合型は、理事会型、評議員会型、その他の機関型を組み合わせて理事選任機関とするものである。メリット・デメリットはその他の機関型と同様である。なお、複数の理事選任機関がある場合(混合型の場合)には、各理事選任機関は、自らが選任した理事についてしか解任権限を有しないとされているため、留意が必要である(⽂部科学省「私立学校法の改正について」(令和5年12月12日更新)99頁)。1号評議員職員2人2号評議員卒業生2人3号評議員設立母体(又は創業者一族)関係者1人4号評議員地域経済団体関係者1人※評議員の人数については、理事の定数の2倍超というルール(現行法第41条第2項)が撤廃され、6人以上というルールに変更される(改正法第65条)。多すぎると実質的な審議ができず、管理コストも増大するため、ここでは最少の6人にしている。令和6年4月~5月令和6年6月~9月令和6年10月~令和7年1月 寄附行為の変更に関する理事会・評議員会の決令和7年4月1日令和7年4月~令和9月6月理事選任機関の制度設計に関する解説は以上である。適切な制度設計の下、経営者以外の者が理事の選解任権限を適切に行使できる状況を作り出すことができれば、経営者への規律付けは格段に向上するだろう。しかし、本当に重要なことは理事選任機関の制度設計のその先にある。ガバナンスの究極の目標は、経営者の暴走を防ぐという消極的なものにとどまらず、優れた経営者を将来にわたって輩出し続け、私立学校の教育・研究の質を向上させる仕組みを構築することにある。各学校法人は、自身の経営者に求められる資質・能力はどういうものか、将来の経営者候補となる人材をどのように育成していくべきか、経営者の後継計画(いわゆるサクセッション・プラン)についても議論を始めるべきであろう。1号評議員は理事会が選任それ以外の評議員は評議員会が選任理事選任機関の制度設計の検討ガバナンス体制全体の制度設計、寄附行為等の関連規程への落とし込み議、寄附行為の変更認可手続改正法の施行、寄附行為の変更理事・評議員の改選プロセスウ 評議員会型の留意点エ その他の機関型・混合型の留意点本改正に関する実務上の対応手順3

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