カレッジマネジメント240号
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2 41特集2留学生はなぜ日本を選ぶのか生数に占める留学生の割合(学部、修士・博士課程別の数)は学部 3%→5%、修士 19%→20%、博士 21%→33%と掲げられている。こうした留学生政策は実現可能で、他国と比べて妥当性のあるものなのだろうか。本稿では筆者が研究代表者を務める科学研究費基盤研究A(一般)「社会経済の転換期における大学設置認可制度の歴史的検証と国際比較研究」(令和5~8年度:研究代表者 濱名 篤)の調査結果から、日本の留学生政策の現状と課題を明らかにしたい。科研研究の対象国・地域としては、英国、ベトナム、マレーシア、韓国、台湾、といった政府が設置認可制度を持つ国・地域で、参考事例として米国(NY州等)を加えた。下記に、英国、韓国、マレーシアの留学生受け入れの実態を紹介し、日本の課題を浮き彫りにしていきたい。まず留学生受け入れ数で世界2位の英国である。英国は、デアリング報告(1997年)を契機にブレア政権が授業料徴収へと舵を切ったことをきっかけに、高等教育機関は「稼げる大学」を目指す一方で、リスクベースの質保証政策を進めることで高等教育の質を重視(規制枠組み)しTEF(Teaching Excellence Framework)の存在)と呼ばれる機関格付けで質保証している。英国はコロナ禍におい英国~欧州の成熟国~―留学生60万人計画に向けたプロポーションを推進ても他国とは異なり、留学生の受け入れ停止をしなかったこともあり、順調に留学生を獲得し続けた。むしろ米国が受け入れ中止していた留学生の受け皿になっていたともいえる。同国政府は2021年には2030年までに60万人の留学生受け入れを目標とすることを発表した。2030年までに達成可能と判断しての設定だったという(日本学術振興会「海外学術動向ポータルサイト」2021年9月2日)。高等教育統計局(Higher Education Statistics Agency: HESA)の2020/21学事年度の数字によると、英国の留学生数は60万5130人で、そのうち大学院生は20万295人であった(日本学術振興会「海外学術動向ポータルサイト」2023年03月23日)。 大学院生の比率は高いが、学部生も半数以上である。人口が日本の約半分であることを考えれば、いかにその数が大きいか実感できる。UUKi(Universities UK International)は2021年9月6日に「INTERNATIONAL STUDENT RECRUITMENT: WHY AREN’T WE SECOND? PART 2」を発表した。その中で英国の高等教育機関、その他の関連セクター及び英国政府に対し、留学生を60万人に増加させるという国際教育戦略のターゲットを満たすかについての提言をしている。具体的な提言は、①快適で多様かつアクセシブルな【目標】2030年までに留学生60万人2020年: 留学生数 605,130人(うち大学院生290,295人) ①快適で多様かつアクセシブルな留学先としての英国のプロモーションを留学生比率:18.7%(2020)改善②留学生が大学卒業後、数年間の英国での就業を可能にする Graduate route を保証③より多様かつ革新的な資金提供機会の創出により留学生の経済的な障壁を縮小④英語能力の向上を支援英国<欧州の成熟国>

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