カレッジマネジメント240号
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43特集2留学生はなぜ日本を選ぶのかネックとなっている大学学士制度や教育国際化力量認証制度を全面改編し、地域ごとに「海外人材に特化した教育国際化特区」を指定し、地域の特徴を配慮した地域発展戦略と連携して、留学生誘致事業を開始していく②学業支援:大学在学中の現場学習機会、インターンシップチャンスを大幅増、留学生が就職前に、より多くの分野の仕事に触れる機会を提供。いつでもどこでも韓国語を学べるよう、テキスト・授業提供のデジタル化を推進し、韓国能力試験(TOPIK)もCBT(Computer Based Testing)に改編。③就職支援:学業から就職までの連携支援を強化する。中小企業等へ就職をする場合のメリット付与等も含まれている。大学によっては学部1年時に高額な学費とする代わりに、1年間で集中的に語学教育や初年次教育を行う、プレミアム1年生教育というのを売りにしている。韓国語があまり出来ないレベルでも受け入れているケースも見られ、一定の語学レベルになったら授業を受けさせるという猶予制度を作っているところもあり、出来ないまま授業に参加させている大学もあるという。ただし、語学力の低い留学生の比率が高いと、認証制度に引っかかり、ビザが出なくなるということもあるという。韓国語能力試験は1~6級まであり6級が一番上で、5級くらいはないと大学の授業を受けるのは厳しいと言われるが、3級程度で入学を許可して、卒業時には4級になることを条件とする、という基準を設けている大学もあるという。一方で、体育とか芸術といった語学力がそれほど重要でない学科の場合は2級レベルでも構わないとなっており、かなり低いレベルであっても入学させて、自分の大学の語学堂(語学学習センター)である程度勉強すれば学部に進学させるといったように、様々な方法で留学生を増やそうとしているのが現状だという(内藤亜弥子「韓国における留学生受入れの現状・実情」アジアの友553号、2023年3月号)。尹政権は2023年から新政策として、地方大学の振興に着手し、グローカル事業を開始した。首都圏外の大学を対象に毎年10大学ずつ3年にわたり採択し、各校へ毎年200億ウォンを5年間提供する(計100億円)。新しい発想の大学を作るため、申請書は5ページのみとしており、独創的大学モデルを作ろうとしている。ただし、首都圏の半導体関連学科の定員拡大は容認する方針は地方大学の反発を招いている。釜山ではA大学が他の2大学との合併を交渉中で、ミネルヴァ大学やアリゾナ州立大学をモデルとしたサイバー大学を計画している。2+2課程では、前半2年間は現地の姉妹校に設置した分校でオンラインによる英語の授業を行い、後半2年間は韓国に留学して英語による国際コースで学ぶ例もあるという。海外分校の設置がほとんど見られない日本とは大きく異なる。韓国の現在の入学定員は43万人、出生数は23万人と厳しい状況である。人口減少を留学生受け入れで補完し、労働力人口と定員割れの大学の生き残りを両立しようとしているように見える。現在の高等教育政策はまず定員削減ではあるが、首都圏人口集中の改善と留学生受け入れから地方での労働力確保という地域振興政策や人口・労働力政策と組み合わせて実行されつつある。 

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