カレッジマネジメント240号
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45特集2留学生はなぜ日本を選ぶのかc) その国で学ぶための費用Cost of studying in the country 86%(ApplyBoard “How Can Diversifying the UK’s International Student Community Future Proof Learning for All?” 2022)留学先の決定要因として、学費等の費用も大事だが、その国の“受け入れ可能性”と“就労可能性”の方がそれ以上に重要だといえよう。今回取り上げた3カ国は地域も違い、社会の人口動態や成熟度も異なるが、いずれも政府が大学の許認可権を持つ国である。3カ国とも高度人材をはじめとする人材(労働力)確保が共通するトレンドとなっており、基本的には高等教育の量的拡大(と質的向上)を図っている。英国や韓国(ソウル以外)では前述の条件a) に積極的に対応しており、英国は留学生が卒業後Graduate Route ビザを取得でき、数年間の就業が保証されている。1998年以降の学費有償化・高額化にも拘わらず1994年と2023年比較してEU圏外から留学生5倍増していることをみれば、就労可能性の方が費用より重視されたともいえよう。そもそも留学生政策は、産業政策、労働政策、移民政策と一体化した課題であるはずだが、日本の「留学生40万人計画」は2003年の留学生10万人計画が大学セクターだけで達成困難と諦めて以来、専門学校や日本語学校を含めた数字である。文部科学省の「2040年の高等教育の定員充足率の試算」では、留学生比率が学部3.2%(2022年)がOECD平均の5.5%まで上昇しても「8割しか定員充足しない(2040年試算)」という試算より「“2割は留学生”が実現できる受入態勢づくりが必要である」という方が説得力研究メンバー:山田礼子(同志社大)、川嶋太津夫(大阪大)、合田隆史(関西国際大) 、塚原修一(関西国際大) 、近田政博(神戸大)、深堀聡子(九州大)、森利枝(NIAD)、芦沢真五(関西国際大) 、白川優治(千葉大)、斎藤貴浩(大阪大)、我妻鉄也(千葉大)、西田亜希子(関西国際大)参考資料:私学高等教育研究所第80回公開研究会「日本の大学設置認可・定員管理・質保証は転換期を乗り越えられるか~国際比較から考える~」2024年2月8日での山田礼子(英国)、塚原修一(韓国)、我妻鉄也(マレーシア)の報告資料を参照している。はある。40万人計画という目標を掲げながら、留学生受け入れ態勢は一向に改善していない。JASSOの国費奨学金増枠だけでは不十分であろう。国としては前述の3条件、とりわけ就労可能性と入国審査の改善が期待される。他方、大学にも大いに改善が求められよう。単に日本人学生の“穴埋め”としては見ていないだろうか。留学生が就職活動で求めることをみると、「就職に関する情報の充実」53.6%、在留資格の変更手続きの簡素化・短縮化」53.3%(日本学生支援機構「令和元年度私費外国人留学生生活実態調査」)が上位を占める。しかし、この調査以外では、留学生が生活全般で抱える不満や困りごとについての全国規模の調査は見当たらず、個別大学での実態調査を見ていかざるを得ない。留学生の受け入れ拡大にあたっては、国内の日本語学校のみならず海外からの直接入学という経路もより重要になる。そのためには、教授言語を含めた語学支援、適応、住宅などの生活支援、進路支援など他国に負けない受入れ体制の整備を政府・大学がしていかなければ、留学生にとって魅力ある国にはならないだろう。アニメや食、安全・安心、円安など、留学生が来やすい社会状況やトピックスが興隆している今が、留学生受け入れのラストチャンスではないだろうか。

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