カレッジマネジメント240号
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Case Studies152大学が根差す精神に照らした多様性獲得留学生のニーズに対応した多彩な教育展開事例2011年国際関係学部 国際関係学科にグローバル・スタディーズ専攻設置(授業は英語)2013年大連理工大学・立命館大学国際情報ソフトウェア学部設置2014年スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)採択2018年国際関係学部にアメリカン大学・立命館大学国際連携学科設置(JD)2019年グローバル教養学部設置(オーストラリア国立大学とのDD)日本学生支援機構(JASSO)調査で2022年度2698名もの留学生を受け入れている立命館大学(全国3位)。大学としてどのような課題意識を持ち、施策を展開しているのか。国際関係学部教授で国際部長の中戸祐夫氏、衣笠国際課長の片岡龍之氏、総合企画課長の岡本香織氏にお話を伺った。立命館における国際化のモットーは、「世界に開かれた立命館」である。近年の関連施策を図1に概観するに、「留学生のニーズに応じてバラエティー豊かな教育プログラムを開発する」「そのために海外大学との連携枠組みを積極的に活用する」といった方策が見えてくる。では、大学として留学生獲得に注力するのはなぜか。「自由と清新を理念に掲げる立命館は、多様性の創造が清新(イノベーション)を生み出すという考えのもと、多様な国際プログラムを展開しています」と中戸氏は述べる。留学生を獲得することは多様性の実現に寄与し、自分と違う見方・考え方を学び、異なるアイデアを組み合わせることがイノベーションにつながる。「同質性の高い状態よりもキャンパスが活性化し、豊かな教育・研究につながると考えています」。また、卒業後自身による広報効果も見逃せない。「立命館良かったよ、とい図1 近年の国際関連施策ピックアップう卒業生の声が、継続的な留学生獲得の基盤には欠かせません」。そうしたネットワーク効果を生むためにも、留学の満足度を高める必要がある。だから、留学生ニーズに即した多彩なプログラム開発に余念がない。具体的に見ていこう。立命館独自の措置として注目されるのが、国際関係学部アメリカン大学・立命館大学国際連携学科(ジョイントディグリー・JD※1)とグローバル教養学部(デュアルディグリー・DD※2)の存在だ。紙幅の関係で詳細は割愛するが、いずれも国内屈指の海外連携による教育実現であり、特に海外からの期待が大きい。「認知課題はまだまだありますが、国際的に稀有な価値として評価されています」と中戸氏は述べる。もう一つ、教育の幅を広げる役割を果たすのがSKP(Study in Kansai Program)だ。学位取得を目的としない留学プログラムで、期間は半年~1年程度。参加者のニーズに合わせて、図2に示す3つのトラックを用意している。2023年度秋学期の履修生はIJL97名、RCE71名、RCJ15名の計183名。コロナ禍が明けてから円安も手伝ってか履修生数は右肩上がりだという。その多くが交換留学生で、出日本語を集中して学ぶトラック。日本語学習歴のない初級レベルから、日本の大学に留学するために必要な日本語能力、アカデミックスキル等の習得を目指す上級レベルまで、レベル別のクラス編成で学ぶIntensive Japanese Language(IJL)政治学・経済学・経営学・社会学・文化人類学・法学・地域研究学・現代日本文化といった幅広い人文・社会科学分野から、情報科学といった自然科学分野に至るまで、幅広い分野の授業を英語で受講できるトラックRegular Courses in English(RCE)Regular Coursesin Japanese(RCJ)N1相当の日本語能力を有している場合、立命館大学の16学部が日本語で開講している教養科目・専門科目を受講できる、最も科目数が多いトラック国際関係学部教授国際部長中戸祐夫 氏図2 SKPの3つのトラック立命館大学留学生がその学校に集まる理由ここからは、現在留学生を多く集める学校を、その理由と共にご紹介する。多様な留学生ニーズに対応した多様な教育プログラム展開

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