カレッジマネジメント240号
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5053日常的な国際共修の実現グローバルな『次世代研究大学』の実現を見据えて特集2留学生はなぜ日本を選ぶのか(人)1510所属大学から勧められて関西にあるから立命館大学しかなかったから図3 立命館大学を選んだ理由(2023年秋学期修了生アンケートより抜粋:104名中29名回答、第1~第3の理由を選択)身は25カ国・地域に及ぶ。「本学全体で見ると留学生出身は中国・韓国が8割を占めますが、SKPは出身の幅が広く、キャンパスの多様性に貢献しています」と片岡氏は説明する。SKP生が立命館を選んだ理由を聞くと(図3)、①関西にある大学で学びたい、②先輩や所属大学の担当者に推薦された、③幅広い科目が履修できるが上位で、特に①は半数以上の学生が答えるという。背景には日本文化への関心の高まりがあるようだ。③は、学部・研究科の壁を越えて様々な科目がとれるSKPの特徴がそのまま評価されている。欧米を中心にしたメジャー・サブメジャーといった履修システムに馴染みやすいプログラムでもあるようだ。一人ひとりのニーズに応じた横断的な履修が可能なのは、教員陣のバリエーションと履修相談に対応する職員のパワーに支えられているからである。「立命館では学生サポートを、組織縦割りではなく横断的に行う体制があります。慣れない外国で不安の多い留学生にとっては、こうした親身な対応は嬉しいのではないでしょうか」と岡本氏は述べる。教職協働が支える居心地の良さと、多彩なニーズに応える教育提供。その結果、一度母国に帰ってから立命館の大学院に再留学してくるケースも出てきているという。教育・研究の幅を担うのみならず、SKPをステップにした展開を担うポテンシャルもあるのだ。また、片岡氏が強調するのが「国際共修」という概念だ。「日本人学生が多様な出身の学生と直にピアラーニングできる環境がキャンパスで実現できること。留学生同士が知り合って化学反応が起こることも多い。そうした学び合いが生まれることが重要です」。よって、日常空間における国際化と学び合いが自然発生する環境こそが肝となる。その仕掛けとして、グローバルコモンズ「Beyond Borders Plaza(BBP)」や、各キャンパスの国際寮「インターナショナルハウ第1の理由第2の理由参加した学生に勧められて専門外の科目を受講できる可能性があるから第3の理由CSC科目(日本文化入門)に興味があったからRCEトラックについて良い評判を聞いたからス(I-House)」がある。前者では日本人学生と留学生の共修や交流機会がスタッフにより常時提供されており、後者では日本人学生が務めるレジデントメンター(2024年現在58名)が生活サポートやイベントの企画・運営を行う。そのほか、学生団体が留学生と交流する機会に対して大学が支援を行うこともある。「共に取り組む機会を多く創ることで、国際共修がキャンパス内外で日常化することを期待しています」と岡本氏は話す。片岡氏は、「教育・研究で成果を出す基盤を作るよう意識することで、国際部のみならず全学的に持続可能な展開になるようにと考えています」と述べる。では現状の課題は何か。中戸氏は、「本学は学園ビジョンR2030において新たな価値を創造するグローバルな『次世代研究大学』を掲げています。今後を見据えると、現状学部生やSKPに支えられている留学生獲得の軸足を大学院にもシフトし、国際的に優秀な大学院生を確保することが優先課題です」と話す。片岡氏は、「SKPはアラカルト的履修になりやすいため、ニーズに対応しつつ体系化できる科目提供、特に英語開講科目のバリエーションは引き続き課題です」と意気込む。学部生の英語履修が可能な学部・学科については、SKP生についても門戸をさらに開けないか協議しているという。これは「非正規生の教育にどのような価値や役割を見出し、どの程度教育リソースを割いていくのか」という問題でもある。岡本氏は、「SKPのプログラムの多彩さが留学生の多様性確保につながり、それが大学院における国際展開につながり、これまで図らずも起こっていた好循環を戦略的に構築していくフェーズに来ている」とまとめる。立命館の国際化は新たなフェーズに差し掛かっているようだ。 (文/鹿島 梓)※1 https://souken.shingakunet.com/higher/2018/08/post-14cf.html※2 https://souken.shingakunet.com/higher/2020/04/post-51e0.htmlIJL トラックについてよい評判を聞いたから専門に関わる興味深い科目が英語で提供されているから専門に関わる興味深い科目が日本語で提供されているからSKP HPをみて参加を決めた

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