カレッジマネジメント240号
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Case Studies254国内学生と留学生を混ぜるグローバルな視座で展開するアドミッション事例国際教育寮APハウス1・2・5グローバル・シティズンシップ・ プログラム(GCP)多文化協働ワークショップ:Multicultural Collaborative Workshop(MCW)FIRST(Freshman Intercultural Relations Study Trip)大分県・別府市・学校法人立命館の三者大型公私協力方式で2000年に設立したAPU。設立時点で学生の半数が留学生という前例のない国際大学だ。現在に至るまで概ねその割合を維持し続け、コロナ禍を経て2023年5月現在、世界106カ国・地域からの国際学生2777名(開学以来最多)と国内学生3199名が学ぶ(国際学生比率46.4%)。多様な留学生を惹きつけ続ける魅力と今後の方針について、米山 裕学長にお話を伺った。APUの教育は「混ぜる教育」と称される。留学生を呼び込む器を作るだけではなく、国内学生と留学生を混ぜ、協働して何かに取り組み、成果を出す。その取り組みそのものが教育であり、留学生だけで固まらないように、国内学生だけで組まないように、「混ぜる」仕組みを教育や寮等、様々に織り込んでカリキュラムや生活を設計している(図1参照)。米山氏は、「幸い本学には主体性の高い学生が多い。また、学生同士で学び合い、切磋琢磨する文化が根づいています。それでも意図的に混ぜるようにしていないと、APUらしい教育成果の最大化にはなりません」と話す。また、APUが大事にしているのは、国内学生と留学生に、留学生と国内学生が共同生活を送るなかで、互いの生活習慣や価値観の違いを知り、助け合い学び合う心を養う、学生スタッフ(RA)が運営する国際教育寮・寮生のリーダーシップ・トレーニング・理論や知識の学習:キー・コンピテンシーである自律性、主体性、協調性、共感性、コミュニケーション力等を、ワークショップを含め・経験学習:学外での経験学習や学内イベント・プログラム企画立案・実行等による経験学習と、目標設定→自己評価→内省→改善というた体験型講座で理論的に学習する機会行動と思考を習慣化・ロールモデルからの学び:卒業生や国際機関・NPO所属・起業家等様々な分野から講師を招聘し、大学での学びや活動における姿勢、キャリアについて学び、自らのキャリア目標を定め、能動的に活動する・1年生向けワークショップ・講義30分(教員が担当、大教室、言語基準別)+グループワーク60分(ティーチングアシスタント(TA)が担当、小教室、言語基準混合)・6名前後の多国籍・小グループで学ぶ4カ月間:グループ編成は多文化構成となるよう、出身地域、国籍、学部などを考慮して組み合される。同じグループで4カ月をかけてディスカッションを重ね、最終的には一つのプロジェクトに取り組み、プレゼンテーションを行う。・グループで取り組むプロジェクト:指定のテーマに沿って、授業内外でグループでの議論を重ね、企画を作り上げ、最終プレゼンテーションに臨む。・1年生向け、4泊5日の異文化体験プログラム・少人数グループに分かれ、くじ引きで決められた目的地に赴き、現地の人々との交流や調査活動を行い、異文化環境下でのコミュニケーションスキルを養う可能な限り同じ量と質の教育・経験を提供する平等性だ。例えば授業は専門科目でも日本語と英語両方で開講する。留学生対応の専門部署を持たず、各部署に英語対応可能な職員を配置し、国内学生も留学生も同様に対応する。特に募集部署では各国の担当者を置き、入学者の多い国では現地の事務所を起点に高校等とのコミュニケーションを密に行うため、人的コストはかなりのものだという。もちろんわざわざ日本の、しかも私立大学に留学してもらうためには奨学金等の対応も必須であり、国際学生獲得のための投資は極めて大きいと言える。それでもAPUにしかできない教育実現のためには、経営的に見てかけるべきコストということなのだろう。留学生の国籍もバラエティ豊かなAPUだが、長らく2割ずつを占めていた中国・韓国が15%に下がる一方でインドネシアが伸びる等、その内訳は徐々に変化している。また、各国からの私費学部留学生数に占めるAPUのシェアがトップ(2022年5月時点、APU調べ)であるのが、ミャンマー、タイ、インドネシア、インド、モンゴルといった国々だ。こうした学長米山 裕 氏図1 APUの「混ぜる」施策ピックアップ立命館アジア太平洋大学(APU)ダイバーシティを基盤とする大学で多様な個を混ぜて起こる化学反応

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