カレッジマネジメント240号
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Case Studies458「英語でICTを学べる大学院」として留学生のニーズにマッチ国際的な課題の解決にフィットする「ICT×探究」事例「人間力を有する高度ICT人材の育成」を教育目的とし、ICT技術を用いて社会課題を解決する人材の育成に取り組んでいる神戸情報大学院大学(以下、KIC)。2005年の開学以来、90を超える国から留学生を受け入れ、現在は、2学年約120名の正規生のうち約6割が留学生で、その半数をアフリカ大陸からの留学生が占めている。日本の大学にはまだ多くはないアフリカからの留学生を多数受け入れている背景を、内藤智之副学長に伺った。KICにアフリカからの留学生が多い理由について、内藤氏は「いろいろな偶然が重なり、我々が意図したことと意図しなかったことが織り交ざっている」と話す。「意図しなかったこと」とは、2013年に安倍晋三首相(当時)が表明した「ABEイニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth:アフリカの若者のための産業人育成イニシアティブ)」である。アフリカの産業人材育成と、日本企業のアフリカでのビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的として、5年間で1000人のアフリカの若者を日本に受け入れ、日本の大学での修士号取得と日本企業等でのインターンシップの機会を提供するというものだ。このプログラムにおいて、「英語でICTを学べる大学院」として留学生の選択肢の一つとなったのがKICだった。KICでは、2012年にアフリカ諸国の政府高官や産業人材らに6週間の研修プログラムを提供したこと等をきっかけに、2013年に英語で学位を取得する「ICTイノベータコース」を開設。以来、情報技術研究科情報システム専攻の中に、日本語で学ぶ4月入学の「ICTプロフェッショナルコース」、英語で学ぶ10月入学の「ICTイノベータコース」の2コースを置き、各言語で同じ内容を教える体制を敷いている。これが留学生の目に留まったのだ。一方、「意図したこと」とは、「ICT×探究」というKICの教育手法が、アフリカからの留学生の目的に沿っていたことである。KICでは、コアとなる理論や実践方法を「講義→演習→発表」の繰り返しにより身につけ、ケーススタディで実務に近い課題解決の実践を体験するアクティブラーニングモデルの授業を多くの科目で行っている。その中で、社会課題に対して自らの強みをどのように生かし、価値を生み出すかという「探究」の考えを学ぶとともに、各々が発見した社会課題に対してICT技術を活用した新しい価値提供の仮説を構築し、検証を行う。「なかなか開発が進まない母国の状態を改善したいと考える留学生に、抽象的にしか考えられなかった課題を具現化し、ICTをどのように適用していくか考える我々の教育手法が、意図の通りにフィットしました」と内藤氏は話す。ICTイノベータコースの留学生の7〜8割は、国費あるいはJICAや世界銀行等公的機関の奨学金の枠組みを利用して入学しているため、KICとして積極的に留学生にアプローチしているわけではなく、「あくまで、希望してくださ副学長内藤智之 氏神戸情報大学院大学「ICT×探究」の教育手法がアフリカ等からの留学生の課題に合致

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