カレッジマネジメント240号
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59世界に広がる修了生のネットワーク特集2留学生はなぜ日本を選ぶのかる学生さんを受け入れているというスタンス」と内藤氏は説明する。むしろ力を入れているのは、教育内容だ。「我々は神戸や日本のいち専門職大学院大学であるつもりは全くなく、教育という公共財として、どこの国の方々に対しても、社会課題に自らの強みを生かしてアプローチして価値を生み出す人材を育成する、という考えで国際標準的に教育を行っています。スローガンとして掲げる『Social Innovation by ICT and Yourself』、即ち、『ICTとあなた自身の人間力でソーシャルイノベーションを起こしてください』ということについて、我々教員自身は『社会課題ってなんだ?』『人間力ってなんだ?』と常に理解をアップデートし続けます」と内藤氏。そうして多様な留学生を受け入れてきた成果の一つが、世界中に広がる修了生とのネットワークだ。例えば、KICはJICAが取り組むウガンダ向け技術協力プロジェクト幼い頃、近所で教わったテレビやラジオの修理を通して抱いた日本の技術や革新に対する深い憧れ等が、私を日本へと導きました。KICではモバイルマネーの威力に着目した修士論文を執筆し、アフリカCFAフラン(※)圏14カ国内での信頼性の高い自由な送金を可能にするアプリを開発。帰国後は、日本とアフリカの民間セクターの橋渡しをするNPO法人と、日本の高齢者の生活の質を高めるIoT機器を開発する企業を運営しています。ニョナ・ドヴィ・セルジュさん(コートジボワール)ICTイノベータコース2023年修了ICT イノベータコース正規生の出身国割合 (2013 年10 月〜2023 年10 月時点)※旧フランス領西アフリカ等で使用される共同通貨『ICT産業振興プロジェクト』においてICT人材の育成を担っているが、自らプロジェクトへの協力を申し出て、現地事情に即した問題提起や助言をする修了生もいるという。「彼の活躍がプロジェクトの成否を分けるかもしれないくらいに動いてくれています」と内藤氏は頬を緩める。将来は、教育内容の多言語化に取り組み、より多様な国から学生を受け入れられる体制を整えることも考えているという。加えて今、内藤氏が考えているのは、「AIを使いこなせる人材、もしくは社会に悪影響を及ぼさないAIの使い方を考えられる人材の輩出」だ。背景にあるのは、AIが今後社会に与える影響である。「単純作業に従事する人達が、将来、AIによって大量に失職する可能性を、我々は社会課題と捉えています。AIを使いこなせる、あるいは、社会に悪影響を及ぼさないAIの活用の仕方を考えられる人材は、特に脆弱な国やコミュニティーにおいて絶対に活躍できるはず。そういったリーダーを育てていきたい」と力を込めた。KICで経験豊富な教員や留学生とアイデアを共有し、意見を交わし合ったことで、それまで温めていた、母国の農業が抱える課題をテクノロジーで解決するためのアイデアを実行に移すことを決意。2015年、アグリテック企業「M-Omulimisa」を起業し、小規模農家が生産性と収入を持続的に向上できるよう、携帯電話を通じて気象情報や農業情報、保険、融資等の情報を得られるアプリを開発。農業サービスへのアクセス改善に取り組んでいます。ダニエル・ニンシイマさん(ウガンダ)2012年に3カ月間のプログラムを受講(文/浅田夕香)● 留学生の声 ●その他 31%ベナン共和国 3%セネガル共和国 3%コートジボワール共和国 3%ケニア共和国 3%ナイジェリア連邦共和国 3%モザンビーク共和国 4%● 留学生の声 ●アフガニスタン・イスラム共和国 14%ルワンダ共和国 14%タンザニア連合共和国 6%シリア・アラブ共和国 6%ミャンマー連邦共和国 5%エチオピア連邦民主共和国 5%

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