カレッジマネジメント240号
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64Contribution寄稿世界中から優秀な留学生を受け入れることは、留学の修了後に母国との架け橋としての相互理解や友好親善への寄与への期待や、近年では高度人材として人口減少の進む日本社会にとどまって将来活躍する人材としての注目も高まるところであるが、われわれ高等教育関係者として何より期待するのは、わが国の高等教育の質や多様性の高まりである。世界から様々なバックグラウンドを持った意欲あふれる留学生が日本の大学に集い、異なる他者が協働して新たな価値を生み出す活動が展開されることにより、教育研究が飛躍的に活性化し、日本の大学のイノベーション力が高まる。これは大学内にとどまらず、日本社会の活性化やダイバーシティを深化させるうえでも極めて重要である。日本の大学はかねてより国際化の遅れが指摘されてきたが、近年、英語により履修できる課程の増加をはじめ、国際対応力の強化に努めつつあるものの、十分に対外発信できていないのではないかという課題や、日本人学生の海外留学を促進し、その好循環により教育研究力を高めていく必要性などが、課題となっているところである。2020年に起こった新型コロナウイルス感染症の拡大は、日本の留学生受け入れ・送り出しの双方を減少させ、国際的な教育研究活動の遅延や、外国人留学生の就職率の低下など、学生や教職員の国際的な交流に大きな影響をもたらした。こうした状況を受け、2023年4月にまとめられた教育未来創造会議第二次提言(J-MIRAI)では、2033年までに「外国人留学生の受け入れ数40万人」や、「卒業後の国内就職率6割」が目標として掲げられた。特に留学生の受け入れについては、「多様な文化的背景に基づいた価値観を学び理解し合う環境創出のために受け入れ地域についてより多様化を図るとともに、大学院段階の受け入れに加え、留学生比率の低い学部段階や高校段階における留学生の受け入れを促進」とされ、量を重視するこれまでの視点に加え、より有望な留学生の受け入れを進めるために、質の向上を図る視点も重視されている。また、文部科学省では、同時期に「戦略的な留学生交流の推進に関する検討会」を開催し、2023年5月、外国人留学生の受け入れの戦略をはじめとする留学生交流全体に係る意義・目的及び地域・分野ごとの戦略等についてのとりまとめを公表した。さらに、2023年8月には、永岡文部科学大臣(当時)のもと、留学生交流や教育の国際化等、グローバル人材育成のための政策パッケージ「せかい×まなびのプラン」をとりまとめた。このプランでは、・大学の国際拠点化の推進・G7、ASEAN等重点地域との戦略的連携強化・戦略的な国際展開のための情報収集・留学生誘致機能強化をはじめとする6つのポイントを重点施策として掲げ、強力に推進することとしている。2003年入省。高等教育局学生・留学生課課長補佐、千葉県野田市教育委員会教育長への出向、文化庁長官官房政策課課長補佐、科学技術・学術政策局産業連携推進室室長等を経て、現職。文部科学省高等教育局参事官(国際担当)付留学生交流室長外国人留学生受入れの意義と最近の動向下岡 有希子 氏1高等教育段階における外国人留学生受け入れに関する主な施策について

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