カレッジマネジメント240号
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73「自由を生き抜く実践知」を体現する価値創出のベクトル的な課題の比重が高く、ニーズがあってそこにシーズを被せていくことで課題解決していく顕在領域」と称する。そのため、研究成果がすぐに実用化される傾向が強い。これは、教育において学生考案のアイデアが実用化されやすかったり、国の基準のエビデンスになったり、企業の方とのセッションが起こりやすかったりする素地にもなるという。「こうした社会インパクトの傍らで実践できることをやりがいと感じる学生が多いです」。多様な経験を積ませるため、今井氏の共同研究では学生も必ず連れて行き、発言させるという。「社会で活躍できる技術者になるには、多様なニーズにアンテナを立て、自分なりの問いを立て、徹底的に調べ、考え、説明する経験を多く積むことで生産性を高めていくしかないと思います。私は、今回の採択で使えるようになった賢い道具を賢く使いこなして、実社会への価値創出できる人材を育成したい。また、研究と教育は両輪なので、学生と良い研究をして、それを良い教育に反映させ、それをまた研究に循環させたい。今回のように新たな技術を修得したうえでどのような価値を社会に創出していくのか、理論と実践を循環しながら、常に社会を見据えた技術者になってもらいたい」と今井氏は話す。法政は大学全体として進めるDX推進計画のもと、2023年3月に個別最適化された教育実現のための「法政大学学修成果可視化システムHalo(Hosei Assessment of Learning Outcomes)」を稼働している。また、遡って2021年から「法政大学数理・データサイエンス・AIプログラム(MDAP:Mathematics, Data science and AI Program)」を開始している。デジタルを活用した大学教育の可視化、学生に必要なデジタルスキルの習得の両方について、大学として取り組んでいるのだ。大学としてのデジタル教育推進と今回の事業はどのように関係するのだろうか。今井氏はMDAPの学内委員も務めているが、「総合大学としてデジタル系教育の基礎を踏まえつつ、より専門に寄せたデジタル教育をそのうえに積み上げることができる。大学教育の体系化という点において、非常にうまくできていると思います」と述べる。専門性は社会との連携の場であり、法政が掲げるブランドメッセージ「自由を生き抜く実践知」体現の場でもある。2022~2025年度の第二期中期経営計画では、「重点的に取り組むべき課題」において3つ目に挙げられる「ブランディング活動の推進」で、「全学的ブランディング活動の推進」「理工系ブランドの向上」が掲げられ、「『実践知』を体現していると感じている教職員・学生の割合を30%から40%に増やす」といった達成指標も例示されている。デジタルを間に挟み込むことで、現在や将来の社会に対する価値創出が専門性と融合して最大化する。今回の事業採択はそのための方策であるようだ。リクルート カレッジマネジメント240 │ Apr. - Jun. 2024(文/鹿島 梓)処理後点群データ

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