カレッジマネジメント240号
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74り見究め続けることが必要」「本学では学力の3要素を捉えたうえで、社会に主体的に関わり新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする気概を持つ者からの挑戦を求める」と示されている。探究学習のプロセスや培われた資質・能力がAPと整合する可能性が高いとみて、評価対象を探究と明示し、その多面的・総合的評価を行う。その最大の特徴は、関学として評価対象とする「探究活動」を定義したことだろう。関学が定義する「探究活動」とは、図の①~③に示される、問題解決的学習が発展的に繰り返されていくスパイラルのことであり、内容がアカデミックで社会的背景を含む活動に絞っている。単なる調べ学習ではなく、社会のなかで自らの問いを見いだし「明らかになっていないものを明らかにする」をコンセプトに、その解決に取り組む一連の行為だ。さらに、探究活動を3つのタイプに区分し、受験生が自身の探究活動のタイプを選択し出願できるシステムにしている。入試設計で特徴的な点が2つある。1つ目は、出願資格に「高校での探究活動において、学内外の発表を行った者」と規定されていること。探究活動のプロセスや成果を第三者にアウトプットする=「発表の機会」を出願資格にしていることだ。2つ目は、提出書類の1つ、「概要説明書」の存在だ。同時に提出する探究活動の成果物についてその概要を説明するもので、A~Cの種類別にフォーマットが用意されている。自身の問いの内容、成果物に至る思考のプロセスや引用・参考にした文献等を細かく振り返る、まさに探究学習の入学センター入試企画課 課長綾部 有氏本号では、入試において高校の探究を評価しようとする2つの事例をご紹介したい。関西学院大学(以下、関学)は、4つのアドミッション・ポリシー(AP)からなる総合型選抜の1つに探究評価型入学試験を設置している。その経緯や現状について、入学センター入試企画課の綾部 有課長に伺った。本入試には前身となる入試がある。2016年度導入の「SGH対象入学試験」、「SSH対象入学試験」、2021年度導入の「探究(課題研究)評価型入学試験」の3つだ。2022年度よりその3入試を統合したのが、「探究評価型入学試験」である。前身の入試設計の背景には、2014年の高大接続改革答申、及び同年に関学が採択されたスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)がある。SGUにおいて関学は「グローバル・アカデミック・ポートの構築」として、国際通用性の高い質保証システムの構築やグローバル人材育成のための教育方法の刷新を掲げ、後者で所属学部・専攻等での学び(ホームチャレンジ)に加え、グローバル社会で活躍するために必要な「主体性」「タフネス」「多様性への理解」養成のため、副専攻や社会探究、留学といったアウェイチャレンジを全学生に課した。こうした方向性と親和性が高いSGHやSSHを対象に、高大接続型入試を取り入れたのだ。現在関学がこの入試を設置する意図について、綾部氏は「本学が新課程の探究学習にどう対応するのかということと、本学のAPに即した多面的・総合的選抜を行うことのクロスするポイントを探りました」と述べる。入試として掲げるAPには「予測困難な社会の変化に適応するためには、自己の生き方を考えながら、物事の本質を様々な角度から探事例report 関西学院大学 探究評価型入学試験大学として政策・業界動向を見据えアドミッション・ポリシーを定める入試で探究のリフレクションを促し適切な評価につなげる探究活動のリフレクションを促し大学教育への接続を図る入試は社会へのメッセージ#9

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