カレッジマネジメント240号
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①②③ABC75リフレクションそのものだ。この書類を用意した意図について、綾部氏は「大事なのは、自分が取り組んできた探究の成果やプロセスを自分の言葉でしっかり説明できること。探究を通して得た学びを学部での学びにどう活かしていきたいのかを話せるように、フレームを大学側で用意したかたちです」と語る。第三者に説明するために用意する過程で、自分が何を得てきたのかが分かる。そこで培われた資質・能力がAPに合致するからこそ、関学は丁寧に評価方法に落とし込んでいる。また、フォーマットを統一したのは、運営上の理由もある。生徒により様々な探究活動を公平に審査するには、様相がバラバラの成果物だけでは難しい。また、APに即した資質・能力を備えたかどうかは、成果物だけではなくプロセスにこそ現れると考えた時、成果物に至るプロセスを主観だけで構築されては審査が破綻しかねない。概要説明書を用意したのは、大学が統一フォーマットのなかでプロセスを公正に評価するために必要だからでもあった。「この概要説明書が書けないようだと、どこかやらされ感のある探究をやってきた可能性がある。逆に言えば、この書類をしっかり書ける生徒は、探究テーマが自分事になっています」と綾部氏は述べる。そして、「入試があることで探究の本質が損なわれることがないようにしたい」と話す。「入試に合格するための探究ではなく、自分の問いを進化させていく意思がある層を選抜したいと考えています」。現状の入学者は、1年次の初年次教育がスムーズに進む世界の諸課題・実社会に目を向け、疑問や関心に基づいて自ら課題を見つける課題について学び、必要な情報を収集して整理・分析し、知識や技能に結びつけ、他者や様々な機関等と協働しながら、課題の解決に取り組む分析・考察結果や活動から学んだことを振り返り、また新たな課題を見つけ、その課題の解決に取り組む新たなデータを収集して知見を明らかにしようとすることを通した探究活動国内外の学校・様々な機関との協働を通した探究活動特定の社会課題等に関する学術的考察を通した探究活動書類審査探究活動の成果物、探究活動(成果物)の概要説明書、大学入学後の学びの計画書等を総合的に評価〇第二次審査審査方法面接・プレゼンテーション・グループディスカッション等※学部により異なる学生が多いという。レポートテーマ設定、情報収集、文献検索といった基本的なリサーチ活動ができるため初年次の学術的なアプローチに馴染みやすく、スタートダッシュが速い。「これがもう一歩進んで、自身の探究テーマや活動内容が本学の数多くある専門性につながるような接続ができてくるといいなと思っています」と綾部氏は期待を寄せる。2022年度より高校で新課程が導入され、全学年が探究経験者となる2025年度入試において、潜在的な志願者数は増えると見るが、課題は審査にかかるパワーだという。「本学にとって大事にしたい入試なのは間違いないですが、運営パワーはほかの入試の比ではないのが実情です。ただここをおろそかにしてしまうとこの入試の本質が損なわれてしまいます。大学としてこの入試をどう発展させていくかを議論していきたい」と綾部氏は述べる。また、「個人的には、高校の探究活動と大学の専門性、出口の就職や大学院進学を含めたシームレスな高校と大学、将来の希望との接続となってくれれば良いと思っています。本学は14学部と幅広い専門を抱えており、受験生の様々な探究テーマを受け入れられる総合大学です。なんとなく大学の名前や印象で選ぶのではなく、自分の興味関心から始めた探究活動をもっと深く専門的に研究したいというビジョンを持って本学を選んでほしい」と力を込める。高校の探究は大学との出会いの種になる。だから関学は高大接続に注目し、その延長線上に入試を設計するのだろう。(文/鹿島 梓)図 入試の概観●探究活動の定義●探究活動の種類●審査方法〇第一次審査初年次教育への接続から専門教育への接続へ

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