カレッジマネジメント240号
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8大学職員に求められるもの先にも述べたように、現在、18歳人口が減少する中で、生き残りをかけて、新たな戦略やビジョンを掲げ、それを実現しようとしている大学等は多いと思われる。だが、そのための職員人材の確保を、経営戦略やビジョンに基づいて戦略的に行っている大学等がどれだけあるだろうか。もちろん、私の所属する大学でも、一部の人材(IR人材等)の確保のために、特別な投資(採用)を行っている状況も見られる。ほかの大学でもこうした動きを推進しているところもあるだろう。ただ、あくまでも私の印象だが、大学等の高等教育機関では、職員の人的資本の確保・活用のために、新たなビジョンや戦略に基づいた戦略的な人的投資を行っているケースは限定的なように思われる。特に、職員に関してである。“新事業”の実現には、運営側の人材の確保が必須なのである。大学等の人的資本経営を考えるうえで、最も重要な転換は、こうした戦略的な人材投資の実施なのである。具体的に言えば、ジョブローテーションについて、これまで行ってきたジェネラリスト育成を目指した数年ごとのローテーションを考え直し、一部の職員に関しては、特定の専門性を身につけるための、経営戦略上重要な専門領域に限定した配置転換をする等である。採用でも同様に、戦略的に必要な人材を特定し、中途採用により必要な人材を採ることを目指す等であろう。これまで行われてきた採用や育成、ジョブローテーショ経営ビジョン・ 経営戦略ビジョン・戦略達成に必要な人材採用・育成・キャリア開発等の供給される人材人事管理施策ンや採用を粛々と続けるのではなく、大学等の執行部は今後のありたい姿を実現するための人材確保・人材活用計画を、戦略的に立て、実行するべき時なのである。こうした中で、大学等の職員の側にはどういう資質が求められるのだろうか。先に挙げた改革による大学価値の向上へむけて、今後職員に求められる人的資本上の資質は、「専門性とリーダーシップ」であろうと思われる。専門性とは、通常一つの領域での知識や経験、スキル等を指す。先にも述べたように、大学等が、今後は他校と差別化した戦略で戦っていくことが予想される中、これまでと比べて、一定の領域での専門性が求められるのは言うまでもない。私の専門領域は○○です、と言え、まずそうした領域で貢献できる人材が、人的資本として必要な時代になると考えられる。大学職員も、組織全体のジェネラリストである前に、自己の専門性を磨くスペシャリストであることが求められる時代なのである。だが、同時に求められるのは、単に一つの領域のスペシャリストになることではなく、組織全体の方向性のなかで、自己のスペシャリティを活かし、組織全体のビジョンや戦略を実現するために、他者を動かし、他者と協働できるための力だと考えられる。こうした力をリーダーシッ戦略的人材確保・活用© Motohiro Morishima All rights reserved.図1 人材確保・活用の戦略性フィット

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