カレッジマネジメント240号
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83PDCAの各プロセスの解像度を上げ経営層・実務層がそれぞれ取り組むべきポイントを明示今後も高等教育機関の環境整備に注力全体の質を高め、教員のファカルティ・デベロップメントに寄与するものだということが見えてきました。図1はそれらを大学全体に循環させ最大化している姿を示したもの。リカレント教育は、大学が社会に存在意義を示し続けるためのトライアルの場であり、『大学改革のキー』になりうるのです」(田中氏)。続く第3章では、リカレント教育を持続的に運用していくに当たっての具体的な課題とそれに対する取り組みのポイントが示される。特徴的なのは、それらが経営層が担うべき中長期的な視点でのPDCAと、実務層が担うべき短期的なそれに分けて整理されている(図2)ことだ。「経営層は大学運営全体から見た観点、実務層は個々のプログラムの改善という観点。持続可能な運営をすすめていくには、それぞれがきちんと見える化することが大切。そこでガイドラインでは、パートごとに、どちらにとって役立ててほしい内容なのか明記しています」(西氏)。「特に評価から改善へのプロセスについては、実務層が担う個々のプログラムについてのものだけではなく、これまで触れられることが少なかった『⑭大学運営への貢献度把握』『⑯組織体制・採算性の改善に向けた検討』という経営層が担うべきプロセスについて力をいれてまとめられ文部科学省 総合教育政策局リカレント教育・民間教育振興室 室長西 明夫 氏PwCコンサルティング合同会社公共事業部 マネージャー田中晋作 氏ています」(田中氏)。また、例えば「③ニーズ把握」において企業ヒアリングの際の質問項目例が具体的に多数示されるなど、どの項目も「非常に高い解像度」(西氏)で解説され、それぞれについて実際の取り組み事例も付される。「どの部分もとても腹落ちする内容になっていると思います。ぜひ時間をとって読んでいただきたいですね」(西氏)。「リカレント教育、リスキリングは今非常に注目されていますが、その中で高等教育機関にしかできないことは何か、社会にどのように役立てるのか。今はその確立のための環境整備こそ最重要課題だと考えています。令和5年度実施の『リカレント教育の社会実装に向けた調査研究・普及啓発パッケージ事業』においてはリカレント教育が企業や社会にもたらす影響を把握する評価指標を開発し、この3月に発表。続いて令和6年度実施の『新時代の産学協働体制構築に向けた調査研究事業』では、産業界の人材育成に関するニーズを業界ごとに調査し、各大学のプログラムの設計・改善に寄与しようとしています。今後も様々な形で環境整備に注力していきます」(西氏)。(取材・文/乾 喜一郎 リクルート進学総研主任研究員[社会人領域])大学等におけるリカレント教育の持続可能な運営モデルの開発・実施に向けたガイドライン令和4年度 大学等におけるリカレント講座の持続可能な運営モデル構築事業名称事業名実施主体文部科学省受託先PwCコンサルティング合同会社大学等におけるリカレント教育を推進するため、その基盤として持続可能な運営モデルを示したもの。令和3年度に行った大学における実証研究を経て作成したガイドライン(骨子・試行版)を基に追加実証等(大学における実証研究や企業等へのヒアリング等)を行って完成させ、2023年3月に発表した。https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/manabinaoshi/mext_01260.html概要URL図2 「持続可能な運営モデル構築に向けたガイドライン」の構成①方針策定・合意形成②体制構築 (外部連携含む)③ニーズ把握④プログラム開発⑤学内外のリソースの確保 (財源・人員)⑥環境整備 (オンライン環境含む)企画・準備(Plan)中長期的PDCA想定する読み手:経営層短期的PDCA想定する読み手:実務層⑦講座間の繋がり、連携の構築⑧募集(広報・周知)⑨講座の運営⑩修了生向けフォローアップ実施(Do)⑭大学運営への貢献度把握⑬プログラム運営・体制に 関する評価の把握⑫企業等からの評価の把握⑪受講生からの評価の把握評価(Check)⑯組織体制・採算性の 改善に向けた検討⑮プログラムの品質向上に 向けた検討改善(Act)

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