27まちに求める、ネットにはない「ガチャ感」上からではなく「横から目線」の情報提供失敗しないフォーマット+「余白」で自分らしさZ世代はどんな場所を求めて移動するのか。電通若者研究部が実施した「若者にとって居心地の良いまち」を大学生と考えるワークショップからヒントが見えてきた。電通の大島佳果氏は、「若者がまちに求めるのは、ネットでは味わえないガチャ感」と話す。「大学生からは、失敗はしないけど、未知の体験や出会いを味わいたい、という声が多数あがりました。アルゴリズムやAIによって、SNSやネット広告に自分の興味のある情報が提示されるのが当たり前の今。失敗しない一方で、興味の外側にある新しい発見が減っています。だからこそ、リアルなまちには予定調和を超えた体験を求めているようです。ただ、目的がなければそもそも移動しません。Instagramで見つけたカフェを訪れたら、店内が狭くて隣の人と会話が弾んだ、といった具合に、最初の目的があったうえで、プラスアルファの体験があるとタイムパフォーマンスが高まるのでしょう。これが楽しめますよ、というガチャガチャの中身は分かったうえで、何が楽しめるかは行ってみないとわからない。そんな最低限の保証があったうえでの冒険にワクワクを感じているようです」(大島氏)。進学時、多くのZ世代が地元を離れる決断をしている。どのようにしてその判断に至るのか。電通の兵澤 諒氏は「移動する/しないは、親によって許容範囲が違うため、年齢的に高校生本人の意思だけで決定できない」と前置きしつつ、「都心でも地方でも情報は等しく無限に手に入る時代であり、情報感度も高い世代。親や友人、メディア、進学の場合であれば大学や専門学校、同じ話題に興味のある人や経験者の口コミなど、多面的に情報を取得、検証、判断していきます。一つの情報源、一方向の情報は信頼しないのが特徴」だと話す。そんな若者に情報発信するとき、ポイントは「上から目線ではなく、横から目線」だと大島氏は提案する。「大学がウリだと思う情報を一方向で伝えるのではなく、実際はこんな感じ、こういう面もあるなど、受け取る側の視点に立った等身大の情報が重要。リアリティのある情報こそが信頼感を醸成し、若者の意思決定を促します」。学校が学生募集で謳いがちな、「地元の大企業に就職が強い」といったウリも、必ずしも若者には歓迎されない。「絶対的な幸せなどないVUCAの世に生きる若者は、『地元企業に就職すれば幸せ』という誰かの決めた正解に懐疑的。内側から見た情報と、外側から見た情報との乖離がSNSによって可視化される時代なので、不安を煽られると同時に、自分らしい幸せを見つけたい、と感じています。だからこそ、学びたいものがある、地域に憧れがあるといった、移動する1つ目の理由は必要なものの、そこを舞台にして、さらに可能性が広がる期待を抱ける場所に若者は惹かれる。答えが分かりきった場所ではなく、失敗を回避できるフォーマットが用意されたうえで、自分らしさを発揮できる『余白』を求めているのです」(大島氏)。 (文/武田尚子)株式会社 電通大島佳果 氏株式会社 電通兵澤 諒 氏特集1若者はなぜ移動するのか大学や専門学校に今進学しているのが、1990年代後半から2010年ごろに生まれた「Z世代」だ。進学をきっかけに地元を離れて移動するZ世代の判断の裏にある価値観とは?求める場所とは──?有識者に伺う。#Z世代が「移動」したい場所
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