カレッジマネジメント241号
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28明確なターゲティングとターゲットニーズの精緻化豊富な地域実習と学修を架橋する教育Case Studies事例地域の伝統や食、アート等のコンテンツを使った観光を「文化観光」と呼ぶ。芸術文化観光専門職大学(Professional College of Arts and Tourism-CAT)は文化観光の中でも日本が特に弱い芸術に特化した専門人材を育成・輩出する大学として、2021年に開学した(※)。2024年度入試は募集定員80名に対して272名の志願者、3.4倍の志願倍率をマーク。在学生の出身地は47都道府県全てに及ぶ(図表1)。兵庫県但馬という立地にあって全国から多くの若者を集められる理由について、平田 オリザ学長に伺った。CAT人気の要因は大きくは3つある。1つ目は、明確なターゲティングだ。平田氏によると、CATの想定ターゲットは「高校の演劇部出身者で、一定以上の学力帯」だという。「その偏差値帯で演劇を学べる大学が関西にはありません。また、日本にはそもそも、演劇やダンス等の舞台芸術を学べる国公立大学がありません。本学が狙ったのはその空白地帯、広いスキマとも言える領域です」。平田氏は世界各地の大学で教壇に立ち、また日本の初等中等教育で演劇指導やコミュニケーション教育を実践してきた。その関係で関連した豊富な人脈を持ち、演劇部顧問の先生方とのネットワークもある。全国で行う講演に、そうした先生が優秀な生徒を連れてきて紹介されるといったことも多いという。演劇に打ち込んでいる生徒の進学先としてCATが薦められるバックボーンがあるのだ。また、子どもが演劇に打ち込んでいる場合、そうした道を選ぶことに当たって、保護者が気になるのは就職である。「演劇では食べていけない」というイメージに対し、CATなら観光分野への就職が見込める点は、大いにプラスに働いた。「生徒のやりたい気持ちを尊重したくとも現実的な問題が気になる、保護者や高校の先生方の信頼を得られたことは大きかった」と平田氏は振り返る。平田氏は2つ目に、2022年度から高校で始まった探究学習を挙げる。「特に小さな市町の高校ほど、探究のテーマが地域に向きやすく、自分の町をどうにかするための要素として、アート、食、観光等がキーワードに上がることが多いように思います。本学はアートや観光を横断的に学べる大学として認知されつつあります」。地域活動の様子学長平田 オリザ 氏ここでは、地元以外の地域から人を呼びこむ大学と、移動を伴わない進学を可能にする通信制大学の事例をご紹介したい。芸術文化観光専門職大学ターゲットに刺さる「ここにしかない教育」で全国から人を呼び込む

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