35手触り感のある地域社会の中で自分起点の学びを深める「働き方を自分でデザインできる地域」実現への展開(人)2001751501251007550250では、改めて高校の魅力化とはどのようなことか。水谷氏は「学校の中で机の上で知識として学ぶのではなく、実社会の手触り感のある中で、自分で見つけたテーマに夢中になりながら、社会の中で人生の縮図体験として学ぶこと」とその内容を定義する。「コンセプトは『島まるごと島前高校』です。観光を知りたい人間は観光協会に働きに行って学び、漁業をやりたければ牡蠣の殻を磨いて学び、教育を学びたければ隠岐國学習センターに行って学ぶ。島の大人は高校生からのお願いは全て受け入れる。島全体が学びの場であり、島の住民が全員先生という考え方です」。大人達はコミュニティー全体で子どもを育て、生徒達は自らの探究テーマと島のリアリティを重ねながら、教科書だけではつかめない「手触り感」を得て、自らのキャリア観を育んでいくのだ。では、隠岐島前高校が全国からの留学生に選ばれるには、どのような認知経路を辿るのか。水谷氏によると、かつては「活動初期段階では、感度の高い親が子に薦めるパターンが8割くらい」だったという。それが現在は6割ほどに減少し、4割は生徒自らが探し当てて来るようになった。こうした比率の変化には、島留学自体の認知向上のほかに、ひとつの傾向があるという。「中学時代に、朝から晩島内生島外生まで大人にやることを決められ、成績だけが価値の尺度となる生活にうんざりして、その先には地元の高校を偏差値で輪切りにして選ばなければならないという自分の未来に嫌気がさして、自分の可能性を拡げる決断をしたがっている生徒に、本校の取り組みは刺さるようです」と水谷氏は説明する。勉強軸ではない新しい挑戦ができること、自分がその主体となれること。若い感性に刺さる「わくわく感」は、物理的距離を易々と越え得る。そこにしかない魅力があるから、人が集まるのだ。現在、プラットフォームでは海士町から始まった高校魅力化を全国120地域に展開し、偏差値軸や地域枠を超えて日本のキャリア観を変えることに挑戦している。海士町が現在取り組む展開として知っておきたいものが2つある。まず、「大人の島留学」だ。地域おこしインターン制度を活用し、島での体験を目的に、年間100名を超える大学生や若手社会人が、海士町に常時留学している。もう1つは、「働き方を自分でデザインできる日本の初の地域になる」というコンセプトの、海士町複業協同組合の取り組みだ。2020年に施行された総務省の「特定地域づくり事業協同組合」制度がその背景にある。地域の事業者で構成される組合が留学生の雇用を2年間保証したうえで様々(年)図1 隠岐島前高校の全校生徒数の推移魅力化開始特集1若者はなぜ移動するのかH13H14H15H16H17H18H19H20H21H22H23H24H25H26H27H28H29H30H31R1R2
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