カレッジマネジメント241号
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36移住第一ではなく島の外に関係人口を増やすな仕事に短期で派遣する仕組みで、春は林業、夏は漁業、秋は教育といった具合に雇用の単位を細かく砕き、自分の仕事をデザインすることができる。水谷氏は、「1年中朝から晩まで同じ仕事をするというのは効率重視の都会型の考え方」としたうえで、「海士町に来る人達は、海士町という地域のあり方を学びたいのであって、必ずしも漁業だけをやりたいというわけではない。島のあり方の全体像を学ぶことが目的なのです」と話す。これは都会ではまず実現できない働き方であろう。多様な人材の多様な雇用を、地域だからこそ実現できる。そして、最初は短期雇用を嫌がっていた地元の事業者も、本気の若者がもたらすエネルギーや、彼らに負けていられないという空気醸成等、多くのメリットがあることに気づく。現在は多くの若者が島での自分の働き方をデザインできるよう、こうした取り組みを大人の島留学にも拡げているフェーズだという。隠岐島前高校の島留学が始まった当初は、「3年で帰ってしまう子のために町のお金を使うのか」という主張が多高校生達の探究学習の様子(隠岐國学習センターにて)く、なかなか支持されなかったという。しかし、「『廃校は避けたい』というのが共通認識だったので、最終的には県外から人を受け入れるための整備と、呼ぶだけではなく教育自体を都会にはできないやり方で『魅力化』していくためには、学校だけでなく地域の方々の協力が絶対必要なのだということを、時間をかけてすり合わせて協議していきました」と水谷氏は説明する。「大人の島留学」でも、せっかく仕事を覚えても短期間でいなくなってしまう若者に仕事を教えるのを嫌がる声は多く上がったという。ここで重要なのが、「島民の意識を変えるためにシーンを積み重ねる」という考え方と、「移住・定住」よりも「関係人口増加」を是とし、「外に関係人口を増やすことが島の経営資源になる」とする価値観の転換である。まず前者は、人を動かすのは理屈ではなく、「実際に良い子が来てくれた」「短期間でも島に活気を運んでくれた」という実感値であるということだ。少子高齢化が進む島の既存リソースだけでは生まれないエネルギーが、短期間でも若者によって創出され、それが「自分達にとって非常に良いことだった」というシーンとして重なって、施策の目的に対して初めて理解が得られる。だから、まずやってみる、手応えを得ることを優先して展開したという。では後「地域共創科」で地域に出て学ぶ高校生の様子

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