カレッジマネジメント241号
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38関係人口のコミュニティーによる経営資源の実質化挑戦のメンタリティを獲得するために島を使い倒す教育が、全国の若者を惹きつけるも本気で学ぼうとする若者が島にどれだけのエネルギーをくれるものなのかを、受け入れ側が骨身にしみて理解したので、10年経って大人の島留学も参画者を一気に増やすことができたと思います」。水谷氏は、関係人口を増やすのに最も大事なのは、島が彼らの存在を本当に歓迎しているかどうかだという。「島にしかない魅力を徹底的にフル活用することに加えて、若者が来てくれることが本当に嬉しいという、排他的ではない視線や空気がベースにないと、関係人口を増加・維持することはできません」。島を卒業した後のネットワーキングとして現在力を入れるのが、「関係人口DX」と称する、デジタル名刺を使ったファンコミュニティー作りである(図3)。相手のスマホにかざすだけで自分の海士町名刺情報が渡るプレーリーカード(電子名刺)を、「海士町アンバサダーカード」として卒業生全員に無料配布する計画を準備中だ。関係性をつないで常に情報発信していく仕組みとして、関係人口側が公式LINEを作ったり、イベントを企画したりもする。つながりを絶やさず、常にコミュニティーに所属している実感を得ることができる仕組みをデジタルで講じることで、海士町の応援団が毎年自動的に増えていくのだ。この仕組みについて、水谷氏は以下のように補足する。「例えば隠岐島前高校を卒業して東京の大学に行った後、なかなか島に遊びに来ない学生がいます。彼らに様子を聞くと、『島の人達は今の留学生達に一所懸命だろうから、自分なんかをもう歓迎してくれないと思う』と話す。もちろん実態は真逆なわけですが、関係人口というのはお互いの思い度合いの同期がとれていないと、遠慮して動けなくなってしまいがちです。だから、そこを可視化しないと、経営資源が活かされません。外にいても島にとってありがたい人なんだと思えれば、何かしたいと思えるのではないでしょうか」。そのためのフックをデジタルで設け、相互に安心できる仕組みを作る。それが関係人口の実質化、経営資源の最大化につながると見込んでのことである。水谷氏は、海士町が若者を惹きつける要素を以下のように整理する。図3 関係人口DXプロジェクト「アンバサダー制度」概要

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