55私は2017年に38年間過ごした東京大学から本学に来て、2019年9月に学長になりました。月1回の専任教員会議には全教員50人がほぼ100%の出席率で集まる、この小ささがたまらなくいいと思いました。学長が一緒に何かしたい時に声が届き、厳しい反応がすぐ返ってくるからです。ここに来た時から常に「山椒は小粒でもピリ辛い。もっと辛くなれる」と言ってきました。仕組みとしての特徴はたくさんありますが、もっと温度感のある定性的な特徴を作りたかったのです。学長になってからは、学部1年生・修士1年生を対象に「学長講話」という講義を毎年度はじめに受け持ち、学生が培うべき力は「帰結への深い理解」と「その理解に至る学習態度」だと伝えています。まずは「覚えるより理解する」ことで、知識が理解に昇華して理解の束となり、理解の束から仮説が立つ。仮説に対応する理由を手繰ることで論理が言語化され、論理的思考力が身につき、仮説が本物になるのが研究です。つまり理解する学習をしていると、論理的思考力や研究力といった汎用力が付随して身についていくのです。そればかり唱えてきたので、量子力学という最も難しい授業で実践してくれた先生がいまして、今4年目を迎えています。1年目に授業評価アンケートで60%強の学生が「理解する習慣ができた」「量子力学は面白い」と答えました。良いサンプルはみんなで共有し、他の教員にもじわじわと広がっています。2024年度には、15年先を見通した教育・研究・運営に関ほたて かずお1979年 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻 1993年 東京大学先端科学技術研究センター教授1997年 東京大学大学院工学系研究科教授2008年 東京大学工学部長・工学系研究科長2015年 東京大学理事・副学長2017年 豊田工業大学副学長・教授2019年 豊田工業大学学長電子情報通信学会エレクトロニクスソサエティ会長、日本学術会議会員・電気電子工学委員会委員長、2016〜2018年応用物理学会会長。専門はシステムフォトニクス、光ファイバセンサ。博士課程修了(工学博士)東京大学宇宙航空研究所専任講師する「長期ビジョン2024」を策定・開始しました。育てたい人材像に「高度な実践力に加え、本質を掴む論理的思考力、逞しい創造力、豊かな人間力を兼ね備えた国際産業リーダーの育成」を掲げています。このビジョンの中心に「体系的な理解」と「付随する汎用力」を『豊田工大メソッド』として据えて頂きました。これからは全教員が自分の講義等の中で豊田工大メソッドを形成していきますが、一例としてレポートを記述式にして論理的思考力を養う等の案が出ています。2024年度入試から工学部に新規導入した一般入試(本学独自試験)も、記述式問題に注力した点が特徴です。「心はビジョンに入った、教員もその気になって動き出している、新入生の皆さんには最初からギアを一段上げて頂いて一緒にやろうよ」というメッセージを伝える入試です。昨年末には「山椒は小粒でもピリ辛い」に込めた想いを、広報・入試室がもっと良い言葉にしてくれました。タグライン「進むなら、足跡のない方へ。」は、佐吉翁の建学の精神と同じ内容をより短くインパクトある言葉に言い換えてくれたと思っています。このタグラインとステートメントによるブランドムービーを、年末年始に中京広域圏でCM放映し、パンフレット類もタグラインのもとに刷新中です。「進むなら、足跡のない方へ。」私達はこのタグラインに込められた価値を具現化する大学として、これからも学生・教職員・社会とともに歩んでいきます。(文/能地泰代 撮影/臼井 美喜夫)長期ビジョン2024で『豊田工大メソッド』を作る
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