カレッジマネジメント241号
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61試験内容提出物主な評価のポイントければ、理想論先行では現状とのギャップを現場が人力で埋めなければならず、疲弊することは目に見えていたからだ。紙幅の関係で詳細は割愛するが、「ランディングの先々の見通しが立てば、あらゆる変化に対応する基盤を整えることになります。目的を完遂するためには同じベクトルのものとして並行して進めました」と大矢氏は述べる。本入試は「課題を発見し、情報を集め、整理してその要点を的確にほかの人に伝えられる力を総合的・多面的に評価する」ものだ。高校の授業や個人の探究学習の成果、または試験当日に与えられた課題にそって情報を整理し結果を説明する力等を、ポスター発表やプレゼン等を通してアピールする。その方法は学科ごとに異なるが、「自分の探究活動を他者に説明する」というプロセスが共通している。そして、学内外を問わず、高校での探究的な学びをそのまま活かして、大学での学びにつなぐことができること。ここが、志望理由を小論文や面接でアピールする通常の総合型選抜との違いだという。大矢氏は、「志望動機を中心にした総合型選抜ではなかなか引き出せなかった内容や個性を、学びの探究入試では、探究を核にすることで引き出したい。面接担当者が投げかける質問に受け身で対応するのではなく、受験生の発信が起点となる選考プロセスにしたかった」とその意図を語る。そのうえで、学科ごとに評価方法が異なるのは、アドミッション・ポリシーに即した選抜にするためである。学科ごとに「入学までに必要な素養」「入学後に身につけてほしい能力」が異なるため、探究のテーマが学科の学問領域と関連する必要がある学科もあれば、そうでない学科もある。受験生側の学びを起点としつつ、評価方法は学科ご入学後の展望等●試験当日使用するプレゼンテーション資料(電子媒体のみ可) ●探究的活動により作成した成果物(任意)・探究的活動の内容としてデータサイエンスを活用した課題解決であるもの、 またはそうした課題解決へと発展可能性のあるものかどうか ・探究的活動やその結果に対して自身の考えを述べられているかどうか ・根拠と客観性のある主張であること ・プレゼンテーションにおける表現技術図2 学部学科ごとの評価方法の違い例:データサイエンス学環と経済学科(2024年度)データサイエンス学環●プレゼンテーション:探究的活動の成果について ●面接:プレゼンテーションに関する質疑応答、数学の基礎知識、時事問題、 とに定めている(図2)。実施してみての手応えはどうだったのか。「受験生を中心に置いた自由度の高い入試だからか、和気あいあいとした雰囲気の面接が多く、対応した教員の満足度は概ね高かったようです」と大矢氏は述べる。高校での探究を楽しんだ層に対するアプローチとして、高校での学びの延長線上にこの入試を位置づけたい。それが大学教育の準備状況を評価するものとなるようにしたい。高大の接合点を模索する試行錯誤がひとつの帰結をみたと言えそうだ。今後について大矢氏は、「実績を重ねるなかでチューニングを重ね、運営負荷と効果のバランス、一人ひとりの個性をきちんと見極めるために適正規模を模索したい」と述べる。また、広報認知の課題は大きいという。大矢氏は、「幸い高校の先生からは探究活動を促進・支援するものとして前向きに捉えられている」とする一方で、「入試自体の狙いやコンセプトについてはまだまだ知られていない」と気を引き締める。大学が求めることと、それが入試でどのように問われるのか、あるいは大学はどのような教育を行っているのかといった点についても、高校訪問等で積極的に伝達していく必要性を感じているという。「入試やオープンキャンパスで待っているだけではなく、その前段階から探究支援に注力し、学びの楽しさを提供し、その先に入試があるようにしていきたい」という。それが多摩に根付くということでもあろう。落とす入試より個性を活かし、育む入試としての今後の展開が期待される。●ポスター発表とその内容への質疑応答:探究的活動の成果を基にした内容●自身で作成したポスター(試験当日に提出)・ポスターと発表内容の完成度 ・ポスターの内容について適切に説明できているか ・自分の成果についての理解度 ・質疑応答への受け答え内容経済学部経済学科(文/鹿島 梓)受験生の学びが起点の入試設計期待以上の手応えと超えるべき広報課題

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