62福井県立大学(以下、県大)は生物資源学部生物資源学科で2023年度入試から総合型選抜「探究力発掘」を導入している。「発掘」という名称がいかにも恐竜王国福井県らしいが、その内容や背景について、日 ひび隆雄学部長、深尾武司学科長、入試担当の伊藤崇志教授にお話を伺った。入試導入の背景にはいくつかの事情がある。1点目は、福井県が初等中等教育における探究学習に熱心な土地柄で、そうした活動の支援やコンテスト等の審査員で県大に声がかかることが多かったことだ。特に相談が多いのはテーマ設定であるという。「探究を軸にした教育改革の支援は本質的ですが、あくまで授業として行われている探究を自らのテーマやモチベーションに昇華しなければ、研究にはなりません。より高次な探究を志すならば、そこに関与する必要があると考えます」と日氏は探究と研究の違いを述べる。だからこそ、大学が関与する必然性があるとも言えそうだ。2点目は、探究活動が活発な理科教育において、せっかく探究に目覚めた層が県大受験につながらず、県外流出している現状である。「外に出てみたいという考えは否定されるべきものではありませんが、県内にどういう進学先があるのかを知らずに流出してしまうケースも多い。理系の進学先として本学の認知を拡げるべく、接続の観点での入試を設計したい」(日氏)。特に生物資源学科が軸足に置く「生物」は、高校の科目においては文系が選ぶ理科科目というケースが多く、理系学生は物理や化学を選ぶ傾向が強い。生物資源学科としては理系学生にもっと入学をしてほしい。だからこそ、理科の探究に熱中したポテンシャルのある生徒に受験してほしいのであり、彼ら・彼女らの選択肢に入る必要がある。3点目は、県大で目的意識が希薄な学生が増えたという実感値だ。「本学の教育で成長する学生はやはり、自分自身に生命科学に関する核がある学生が多い。そうしたものが入学前からある層と、入学後見いだせる層がいます」と日氏は話す。後者は概ね基礎学力がある(知的体力の高い)、一般選抜での選抜層が中心だ。そして本入試は前者を選抜するための方策である。生物資源学はそれまで勉強したことがない生命科学なので、イメージが漠然としている人が多く、何となく「農学でしょ」と括られてしまいがちだという。しかし実際は、医学に資する領域の研究や、農業に関しても天候や水理等を含め様々な学問の複合領域である。大学の専門教育に対する理解が進んでいないことと、そこに自らのテーマ感を見いだせる人が少ないことは連動した課題と言えそうだ。こうした背景を踏まえ、2025年度の新課程対応入試の前にスモールスタートするべく23年度導入となった。入試の狙いについて、伊藤氏は「高校までに理数系で積極的に探究に取り組んでいて、大学で理系の研究をしたいと思っている人を選抜するための入試です」と述べる。福井学部長日隆雄 氏学科長深尾武司 氏入試担当伊藤崇志 氏事例report 福井県立大学 総合型選抜「探究力発掘」入試は社会へのメッセージ高校の探究導入を背景に理系進学者を獲得する入試を設計理系探究活動のプロセスを評価し、入学後の研究につなげる高校の理系探究学習を支援し大学の教育研究へ接続する
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