カレッジマネジメント241号
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63県にはSSH校が4校、重複するが探究科を持つ高校が8校あり、SSH同様の教育研究を展開したい高校に県が財政的支援を行う仕組みもある。本入試は探究学習に力を入れる県内出身者が対象で、それら10校の生徒を中心に受験者が増えることを期待しているという。また、県内出身者に留まらず、県外にも対象を広げる構想もあるようだ。入試の概観を図表に示したが、選考の中心は第2段階選抜だ。自分の探究活動について、内容や思い、大学入学後の研究にどうつなげるかといった考えを言語化することが求められる。そのうえで「探究活動の過程における創意工夫、成果に考察を加えて課題解決しようとするスタンス」を評価する。「高校の探究はチーム活動が多いため、成果の評価だと自分以外の他者や環境による影響も大きくなってしまいます。そうではなくて、自分がその探究で何を担ったのか、どのように振舞ったのかを評価対象としています」と伊藤氏は説明する。では、探究力を持って入学した後、大学教育においてどのようにその素養を伸ばすのか。県大は「リサーチクレジット」という仕組みを用意している。「高校で探究活動に注力した生徒が、入学後4年次になってからの研究室配属だと、探究と研究の接続にブランクが生じるため、目的意識がしぼんでしまう恐れがあります。そのため、早期に研究をできる制度を作りました」と深尾氏は説明する。23年度は3年次から挙手制で研究室配属・単位化できるようにし、学年の約半数が参加したという。24年度は2年次から参加できるようにさらに制度を前倒す。意欲の高い層を選抜し、大学の実験や卒論に対する態度醸成を図りながら、専門性の高い研究へとつなげる仕組みだ。結果として、こうした仕組みのなかで成長すれば、将来的な活躍へつながるだろうと見立てる。こうした教育と入試を整備することは、従来のペーパー①高校等において、数学・理科・情報等、自然科学分野の課題研究や探究活動または自由研究を行った者 ※課題研究や探究活動とは、SSHによる研究に限らず、課題探究授業による資料調査、部活動(科学部、生物部等)での調査等も含む。 ②分子から生物、さらに生態系にまで及ぶ広範な対象を取り扱う科学分野の勉学に強い意欲を持ち、生物資源に関わる知識と技術をもとに、地域社会、日本、世界の人々の幸せのために将来働く意欲と希望を持つ者出願資格志願者数が募集定員の5倍を超えた場合に、以下の出願書類により熱意と適性を評価し、第1段階選抜を実施することがある ・自己推薦書(本学様式、500字程度):これまでの探究活動に対する思いと大学入学以降の研究に対する熱意について作文 ・研究成果概要(本学様式、A4 2P):高校等で自ら、またはグループで行った数学、理科、情報等の科学分野に関連した研究について、動機や成果を示す書類を作成(研究の動機・目的、材料と方法、結果、考察、参考文献の項目に分ける)第1段階選抜出願書類(調査書含む)、プレゼンテーション、面接を総合して評価 提出した研究成果概要に記載された課題研究や探究活動・自由研究の内容について、プレゼンテーション(5分)、質疑応答(5分) プレゼンとは別に面接員による面接を行う。面接では、大学での学業への意欲と大学で学んだことを将来どのように活用して社会貢献したいかを確認する ※発表方法:パワポかPDFのプレゼンテーションファイルによるプロジェクター発表第2段階選抜評価のポイント特に探究活動の過程における創意工夫、得られた結果に客観的な考察をして課題を解決しようとする能力を評価する試験で点数が高い学生に対する教育や評価とは異なる観点を入れることでもある。深尾氏はその意図を次のように説明する。「学校の勉強と社会は違うとよく言われますが、本入試で選抜するのは社会での活動に近い探究という営みに長けた人材です。社会に適合した理系人材をどれだけ増やせるかという挑戦でもあります」。日氏も、「探究がベースにある世代の学修は、恐らく脳の使い方が変わってくるはず。それを大学のフィールドでたくさん失敗して、そこから学び、新たな課題解決に挑めるように指導していきたいのです」と補足する。社会活動たる探究に長けたチャレンジを恐れない人材を選抜し、大学がそれに合わせた環境を整備するというのが、この入試改革の本質であるようだ。入試の定員は3名で、学科定員45名に対して約6.7%。県内高校からの農学系進学者の実績等を踏まえて設定した数値だという。農学系と進路を定めているわけではない理系層も含めれば、広報余地は大きいと言えるだろう。今後はこうした状況も踏まえて定員増加も検討中だという。入試導入初年度は志願者が0名だったが、2年目は3名が志願、2名が合格となった。高校での探究活動のなかで県大の支援を受けたことがある生徒だという。県大は、前述した高校への探究支援のほか、高校教員との情報交換の場の設定、Slackを利用した相談の受付等も行っている。「関心はあるが様子見」という高校が多いことも把握しており、「次年度以降が本番」と日氏は気を引き締める。数を狙える入試でないのは自明だが、こうした入試を設計する大学のあり方として、地道な接続活動が効いてくるのであろう。まさに入試は社会へのメッセージである。※2024年度総合型選抜学生募集要項より編集部作成(文/鹿島 梓)図表 入試の概観探究対応入試である次年度が本番

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