カレッジマネジメント241号
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tnemeganaM ytisrevi IgnitavonnnUて立ちはだかっていることも指摘している。アジア経済研究所の牧野百恵主任研究員は、実証経済学の研究成果を踏まえ、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきといったジェンダー規範や、男性とはこういうもの、女性とはこういうものといったステレオタイプが、ジェンダー格差に大きな影響をもたらしていることに警鐘を鳴らす。このような問題に高等教育はどう向き合い、その解決のためにいかなる貢献をなすべきなのだろうか。ジェンダーギャップ指数を構成する4分野の中で、教育は世界において比較的高い水準にあるといわれているが、高等教育に限ると、日本の大学進学率に男女格差は依然として存在する。2023年度の大学進学率をみると、男性60.7%に対して女性54.5%と、差が縮まりつつあるとはいえ、なお6ポイントの開きがある。さらに大きな問題は、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の卒業生・修了生に占める女性割合である。2023年9月公表のOECDによる調査結果では、自然科学・数学・統計学分野のOECD平均54%に対して、日本は加盟38カ国中最下位の27%、工学・製造・建築分野の平均28%に対して同じく最下位の16%と、著しく低い水準にある。STEM分野のうち技術・工学分野においては欧米各国でも女性割合は5割を大きく割り込み、それが男女の賃金格差をもたらしていると指摘されているが、わが国の現状はそれをさらに下回る。表1は、「学校基本調査」を基に関係学科別の女子学部学生数の変化を、「学校教員統計調査」を基に専門分野別と職名別の女性教員数の変化をそれぞれまとめたものである。前者の最新は2023年度、後者の最新は2022年度であり、現行の職名制度になって最初の教員統計が2007年度であることから、学生、教員ともに2007年度と最新値との比較を行った。関係学科別の学部学生数をみると、人文科学は女子、社会科学は男子に偏る傾向があり、理学、工学の女子割合は依然として低い。家政、教育、芸術も女子割合が高い傾向は続いている。2007年度と2023年度を比較すると、学部学生の女子割合が5ポイント上昇する中、人文科学が微減、理学が微増、社会科学、工学、農学で5ポイントを超える上昇が見られる。また、保健のうち医学に限ると女子割合は2007年度32.6%から2023年度37.3%に上昇している。学科別にみた男女の偏りが縮小される傾向にあることが確認できるものの、16年間での変化としては決して十分とは言えない。表1に示した通り、大学の本務教員に占める女性割合については、2007年度の18.2%から2022年度26.8%へと8.6ポイント上昇しており、専門分野別にみても全ての分野で上昇がみられる。その一方で、いずれの分野も学科別の女子割合と比べるとなお大きな乖離がある。職名別にみても、学長から助手までの全ての職名で女性割合は上昇している。特に副学長に占める女性割合の上昇幅が大きいのは大学運営への女性参画を重視するトップが増えつつあることの表れと考えられる。ただ、准教授、教授と職が上がるにつれてその割合が低下する傾向が続いている。大学の教育研究や部局運営に指導的立場で関わる女性がなお少数にとどまる現状の変革が急がれる。表には掲載していないが、教員以上に女性割合が大きく上昇しているのは事務系職員(本務者)である。教員と同様に2007年度と2022年度を比較すると、41.4%から53.5%に上昇。うち私立は47.5%から54.4%だが、国立は30.6%から52.0%、公立は34.7%から51.4%と顕著な上昇がみられる。課長相当職以上の女性割合についてはデータの得られる国立大学について、2007年度10.7%が2022年度22.5%に上昇しているものの(国立大学協会調査より)、職員に占める女性割合が5割を超える現状を考えるとなお低いと言わざるを得ない。女性教員や女性職員が能力を発揮しやすい環境を整え、指導的立場での活躍を促すとともに、それらの基盤のうえで、大学進学者の男女格差を解消し、STEM分野で学ぶ女子学生を増加させる。そのことを通して、大学はわが国のジェンダーギャップ解消に主導的役割を果たしていく必要がある。大学を強くする「大学経営改革」70大きな問題はSTEM分野の女性割合の低さ上位職になるほど低下する女性割合

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