カレッジマネジメント241号
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8進学目的が不明確な生徒は地元進学を選ぶ地元に残る生徒が増えているのですね。――生徒達の地元志向が強まる一方、受け入れ先である地元大学側には変化があるのでしょうか。千葉 地方大学は、受験生という小さくなりつつあるパイを必死に奪い合っています。今は、地域の子ども達を囲い込もうとする大学側の意向と、地元の大学で学びたいという生徒側の意向が合致していますね。舟越 一昔前、九州地区の中堅私立大学が就職支援の手厚さやキャリア教育への注力をアピールした時期がありました。私大が生徒獲得のため特色を打ち出し、上手にプロモーションしたことで、地元の大学に通っても大丈夫そうだという安心感が生まれた気がします。土方 津東高校の場合、国公立大学に進む40~50人の内10人程度が地元の大学に、私学を含めると80人程度が地元の私大や短大、専門学校に進学します。一方、中京圏には100人超、京阪神圏に50人超が進みます。三重県には一定レベル以上の私大があまりないため、自分のレベルに合う大学が地元で見つけられなかった生徒は仕方なく、自分の偏差値と合い、自宅からギリギリ通える中京圏、京阪神圏の大学を目指すケースが多いと思います。「名古屋に出たい」「名古屋のこの大学のこれを学びたい」ではなく、「地元の大学と偏差値が合わないから」「(代わりに)ここなら入れるから」と考えて進学先を決めるのです。千葉 その感覚は分かります。大湊高校の生徒の多くも、「ここなら入れる」という観点で進学先を決めがちです。今は、●土方清裕 氏 新潟県立津南中等教育学校三重県立津高校で進路指導主事を担当後、2校で教頭を務め、2018年三重県立飯南高校校長に就任。地域協働による高校改革推進事業に4年間携わり2022年より三重県立津東高校校長(※)。役職定年を経て、2024年4月より現職(国語担当教員)(※)は座談会当時の所属・肩書早期に学生を確保したい地元の大学から指定校推薦の枠がたくさん出されていますから。そうしたあやふやな動機で大学を選ぶ生徒と、自分なりに色々調べて進学先を決める生徒と、二極化していると感じます。舟越 私のところもほとんど同じ状況で、目的意識の高い生徒とそうでない生徒が二極化しています。――進学校で優秀成績な生徒も、「ここなら入れる」という観点で進学先、特に地元以外の大学への進学を決めることがありますか。舟越 国公立大学であればあり得ますね。土方 学習習慣がある程度身についていて勉強したいことがそれなりに明確な生徒が、共通テストの点数を見ながら合格できそうな他地域の国公立大学に入学するケースはそれなりにあります。一方、学びたいことがない生徒は、地元で通える大学を決めがちですね。舟越 話は少しそれますが、この10年で長崎県全体では九州大学の受験者や合格者が減り、代わりに県内や九州内の大学の受験者や合格者が増えています。地元志向が強まっただけでなく、学力の地盤沈下が起こって旧帝大に合格できる層が薄くなる傾向が表れていて、高校は危機感を覚えています。千葉 学力の地盤沈下は青森県でも見て取れます。今が高校にとって、踏ん張りどころなのかもしれません。舟越 学力低下の背景には、高校入試が機能不全に陥っていることがあるのかもしれません。長崎県では私立高校の授業料が実質無償化されていて、公立の進学校に合格できなくても私立高校に通えてしまいます。ですから、高校受験時の勉強に熱が入らなくなるかもしれないのです。

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