カレッジマネジメント241号
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9「ここでしか学べないもの」が最大の魅力に探究に打ち込む生徒は主体性を得て外へ挑戦する――その一方で、今はレベルの高さと強い個性とを兼ね備えた大学が地方にも登場しています。地方の大学が「ここなら入れる」ではなく、その魅力で生徒に選ばれるためにはどうすればいいとお考えですか。舟越 松浦高校では今年、九州・中四国地方の国公立大学を中心に合格者を出しました。どの生徒も探究活動を通じて大学でもっと深めたい学びがあり、各大学で教わりたい先生を見つけたのです。そして、オープンキャンパスに参加し、総合型選抜や学校推薦型選抜で合格したという、ある意味で理想的なパターンでした。土方 飯南高校でも似通った事例がありました。高校時代に地域活性化で頑張っていた生徒で、大学でも地方の空き家活用で活躍しています。やはり、その大学でしか学べないことがあるとか、素晴らしい教授がいらっしゃるとか、偏差値以外の特徴がある大学は生徒から選ばれやすいと感じます。本人に目的意識が芽生えていれば、進路選択活動が充実したものになりやすい。一方、高校側も生徒に「夢中になった経験」をさせることが重要ではないでしょうか。それがある生徒は、自分にマッチした進学先を自力で調べたりするものです。千葉 そうですよね。一生懸命に学んだり打ち込んだりしたことと大学以降の学びが合致すれば、生徒達は前に進めます。ただ、実際は、現在の高校の探究学習でそこまでできる生徒は半分もいません。他の生徒はただただ焦ったり、安直な学びに走ったり、諦めたりします。●千葉栄美 氏 青森県立田名部高校 校長青森県立田名部高校、弘前高校等で進路主任、教務主任等を務めた後、青森高校教頭を経て、2021年より大湊高校校長(※)、2024年4月より現職(※)は座談会当時の所属・肩書舟越 従来の高校では、偏差値に基づいた進学指導が行われがちでした。私達はこうした状況を変えようと、生徒のやりたいことが実現できる大学に進学させたいと努力してきましたが、まだまだですね。社会が変わる中で、高校側も考え方を変えなければならないのですが。――先生方のいらっしゃる高校はいずれも、地域をベースにした教育を展開されています。そこでは、地域活動に打ち込んでいた高校生もいたと思いますが、そうした生徒ほど地元に残るといった傾向はありますか。千葉 いいえ。これはあくまで私の感覚ですが、地域活動に熱心だった生徒ほど、卒業後は青森県から出て行きますね。彼らは高校在学中に自信を身につけ、勇気を持って社会に挑んでいく。世界を広げ、学びを高め、いずれは地元に戻って貢献しようと考える人が多いと感じます。土方 私も同感です。その地域で素敵な大人、本気になって取り組む大人と出会い、彼らに支えられながら何かに打ち込んだ高校生は劇的に成長しますが、だからといって地元志向になるわけではありませんね。むしろ逆だと思います。格好いい大人に出会って伴走してもらう経験をすると、もっとそういう経験ができる場所を、県内外問わずフラットに選ぶようになります。舟越 地域での学びが良ければ、主体性が磨かれるわけですね。その結果、地元かどうかではなく、良い経験ができるかどうかという観点で居場所を求めるようになるのでしょう。土方 ただ、その地域に魅力的な大人がたくさんいれば、そ特集1若者はなぜ移動するのか

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