11半導体関連企業との協力体制によるカリキュラム産官学が一枚岩になるためにそれぞれの間を取り持つ役割が大切備しています」(井原氏)この大学院の修士課程の定員は120名の予定。工学部の半導体デバイス工学課程の学生や情報融合学環の学生、工学部の情報系等の学生からの入学者で80名程度は見込まれるが、あと40~50名は熊本大学以外、全国からの修士学生入学に期待をかける。それだけ多くの人材輩出の責務を熊本大学は果たそうとしている。「工学部では化学系の学科であっても、10人以上の学生がJASMをはじめ、半導体の企業に就職しています。先にお話しした通り、半導体は総合的な産業なので、今後は他の様々な分野からも大勢の学生がそこに就職することになっていくでしょう。そういったことも見込んで修士の数も多く見込んでいます」(井原氏)こうした半導体人材育成の体制を整備している熊本大学と半導体企業との関わりも注目すべきポイントだ。まず25年4月から熊本大学の1年次学生に向け、TSMC によるカリキュラムがスタートする。半導体製造の基礎に関わる講義をTSMC(またはJASM)社員から直接受けることで、1年生の段階から半導体産業への理解と興味を深めることを目的にしている。また半導体関連企業各社と提携し、インターンシップも今後展開していく予定で、TSMCの本国台湾に1カ月程度のインターンシップも計画されている。「インターンシップは、学生にとっては実際に製造の現場を見ることができる貴重な機会です。すぐ近くに半導体の世界的な製造一大拠点があるというダイナミックな臨場感のなかで、産業界を見て学びにつなげられる。非常に恵まれた環境だと思います」(井原氏)九州大学が中心となって組織される九州半導体人材育成等コンソーシアムで半導体に関する研究機関を持つ複数の大学院を対象に、TMSCの実際に半導体を作っている専門技術者や研究者の講義がすでにスタートしている。半導体関連の研究を実施している優秀な学生に対するTSMCのスカラシップも始まっている。上限30名をめどに現在選考のプロセスに入っているという。大学発ベンチャーの広がりにも力を入れている。8年前地元工業連合会や金融機関等が組織するコンソーシアム熊本大学に2023年に設置された先端半導体研究クリーンルーム。半導体研究に特化した機器が揃う。共同研究に利用でき、将来的にはオープンラボにすることを検討。25年4月にはDXイノベーションラボラトリー(仮称)の最上階にオープンラボクリーンルーム(OLCR)を開設予定。が運営する「熊本テックプラングランプリ」で、これまで16社の起業を支援、うち2社ほどが現在IPOを目指している。この仕組みからはまだ半導体関連ベンチャーが出てきていないが、熊本大学の半導体関連のコースの充実により、今後はその登場が期待されている。熊本の半導体産業への産学官の取り組みを見てきたが、各セクターをつなぐ役割として自治体の役割はとても重要だと熊本大学・井原氏は語る。「半導体の人材教育・人材輩出の面でリードすべきなのは大学ですが、良い教育を提供するために、その産業界と自治体が一体となって進めていかないと、やはり人材育成もうまく回っていきません」また、各関係部署のトップのコミュニケーションと意思決定が早いこと、さらに、交付金を申請し大学の新設コースを作る等、短期的に具体的な目標を設定して進めていくことで、着実に前に進めることができている、と熊本県庁の辻井氏。「中長期的なビジョンだけではなかなか物事は進んでいきません。確実に進められる具体的な目標を設定していくことも不可欠だと思います」。まだ始まったばかりで発展途上の段階ではあり、一大国家プロジェクトの道のりは長いが、産学官の連携がより強固なものとなり、結実することに今後も注目したい。(文/木原昌子)特集1● 産学官共創の未来
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