19産学官連携の推進プロセスにおける要諦─事例集の冒頭には、背景として「民間企業との共同研究は依然小規模なものが多い」「1000万円以上の共同研究は、民間企業と大学等で実施される件数の総数の5.4%にとどまっている」との記載もあります。企業の方々にお話を伺うと、日本の大学への大規模な投資に踏み切れない理由の一つとして「投資に見合う効果を得られるかどうか不透明だから」との声が挙がってきます。大学は、自らが持つ知の価値についてもっと伝えていく必要があるということではないでしょうか。この課題意識から、経済産業省が2023年に公表したのが、大学が持つ知見やその価値を可視化する手法をまとめた「産学協創の充実に向けた大学等の『知』の評価・算出のためのハンドブック」です。今回の調査分析は、文部科学省の事業として「望ましい産学官連携を実現するための要諦」について紐解いていきました。事例集では、「産学官連携の推進プロセス」における要諦が4つ(図2)、「推進プロセスを支える体制・仕組み」における要諦が5つ(図3)、合計9つの要諦が示されている(図1)。まずは「産学官連携の推進プロセス」から、各要諦の概観を折茂氏に伺った。─まず、パートナーとの関係構築の方法を様々に模索し、トップ対トップの継続的なコミュニケーションで関係を深化させて大型共同研究のきっかけ作り等を図ることが示されています。関係構築のパターンは大きく2つあります。1つは「新規コネクションの獲得」で、企業候補を探してアタックし、少しずつ関係を構築していく流れです。企業候補探しやコンタクト方法の模索は、研究者だけでなく、例えばURA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター)や産学連携コーディネーターと協働して取り組むものではないかと思います。もう1つは、「既存のコネクションの深化」で、小規模な共同研究や学術指導から規模を大きくしていく流れです。その際にポイントになるのが、トップのコミットメントです。あるタイミングで社長や学長も巻き込み、トップ対トップの対話を通じたビジョンの共有や、共通のビジョンに基づき企業と共同でテーマ探索を行う仕組みを構築することが、大型案件の創出には有効です。図3 推進プロセスを支える体制・仕組みにおける5つの要諦要諦①戦略的なパートナーとの関係構築:ビジョン共有とテーマへの落とし込み要諦①特集1● 産学官共創の未来
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