カレッジマネジメント242号
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23─要諦⑨は、企業側が取り組むべきこととして、大学側の視点も理解しているキーマンをリーダーに据えることが示されています。企業も、大学と共に価値を創出していくスタンスでリーダーシップを持って参加するなど、もっと大学とのつながりを積極的に活かす意識を持っていただきたいということです。例えば、コンソーシアム形式のプロジェクトにおいてある大学との取り組みをさらに次の展開につなげていくなど、企業の担当者が触媒となって新しいパートナーとの関係を構築していくような動きができると、企業にも利があるでしょう。企業では担当者が数年で異動してしまうパターンが多いですが、同じ人がある程度長い期間担当することも大事になってくるのではないかと思います。─事例集は研究大学を視野に入れたものですが、教育・人材育成に軸足を置く大学においても、地域との連携・共創を図る上で示唆的な内容だと思います。それらの大学がこの事例集から学び取れることとは何でしょうか。まずは、「我々は何をもって地域・社会に貢献していくのか」「どういう人材を社会に輩出したいのか」「そのために、どのような取り組みをしていくのか」という視点で全学ビジョンと戦略を明確にし、学内に浸透させること。加えて、戦略の実行にあたっては地域社会とのコミュニケーションが大事になります。首長や地元の産業界の名士といった地域社会のトップと学長とがしっかり四つに組んで議論し、進めていくということです。この2つは、「組織」対「組織」の産学官連携においてトップ同士がコミュニケーションをとることや、全学戦略を浸透させることと構造的には同じだと思います。─トップ対トップのコミュニケーションによって課題認識を共にし、体制づくりやプロジェクトを実行できている大学はそう多くないように思います。ボトルネックはどこにあるとお考えですか。大きくは、アカデミアの方々のマインドセット(基本姿勢)と体制面の2つに課題があるように思います。まず、マインドセットの課題として、研究者の方々は自身の興味・関心を追究することを第一に考える傾向にあります。もちろん、だからこそ新しい発見が生まれるのであり、研究という側面では非常に大事なことです。一方で「民間企業や社会が知の付加価値をどこに見出すのか」という観点については疎かになっている場合が少なくないと思います。教育についても同様で、自校教育で育成した人材が輩出される社会には、どのような関心や課題があるのかを熟知する必要があるのではないでしょうか。体制面の課題としては、こうした意識を教員に浸透させる、あるいは、こういった意識を持つ教員を雇用する必要があるということです。自校にできる価値提供を磨きつつ、先に挙げた外部人材の活用、市場を俯瞰する機能を担う人材配置などを合わせて行うことで、自校の価値が客観的に評価され、地域や社会への貢献との間に橋が架かるのではないでしょうか。要諦⑨キーマンをアサインすることによるプロジェクトの円滑な推進・拡大まとめ:教育・人材育成に軸足を置く大学への示唆特集1● 産学官共創の未来(インタビュアー/鹿島 梓 文/浅田夕香)

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