45議論型授業で多様性の基盤である「自己理解」を深める発揮して行動することを求めるリーダーシップ・スタイルです。昨今は、シェアード・リーダーシップを持ちながら、トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(以下TFL)を発揮できると、組織の生産性が非常に高まるという見方が主流です」。TFLは「ビジョンと啓蒙」を重視し、企業の目標を咀嚼して部下に伝え、モチベーションを高め、部下の学習や成長を重視するものだ。なぜシェアード・リーダーシップとTFLが女性に向いているのか。「一つには、後天的な理由で、女性のほうが男性よりもコミュニケーション能力が高いため。マイノリティであるが故に、マジョリティに対して会話で意見を通す機会が多いため、必然的にコミュニケーション能力が高くなる傾向があります。そしてもう一つは、ジェンダー・バイアスによる影響です。もし女性リーダーが、『優しくて協調性がある』という女性のステレオタイプを軽視して、男性的な『強くて仕事ができる』リーダーシップを取ると、『仕事ができても優しくない、性格が悪い』と思われ周囲の評価が下がる傾向があります。一方で、女性らしさを出しすぎると『優しすぎて仕事ができない』と見られがちです。ステレオタイプのダブルバインドに苦しむ女性にとって、部下に温かく接し、成長を促すTFL型や、『強さ』を打ち出さないシェアード・リーダーシップは、デメリットを引き起こすリスクが少なく、無理のないスタイルと言えるでしょう」。ちなみに、男性リーダーは、仕事ができさえすれば性格に関係なく評価が高くなるそうだ。組織のなかのマジョリティに属している人は、そうでない人よりも潜在力も含めて正当に評価される可能性が高まるという研究結果もある。「管理職に男性が多い組織では当然男性が有利で、女性は不利となる。意思決定の場にマイノリティである女性が増えていかなければ、社会のルールは変わりません。多様なリーダーシップが発揮され、様々なタイプのロールモデルが誕生すれば、後に続く人も増え、真の女性活躍が実現するのではないでしょうか」。今、組織におけるマイノリティは女性だが、育児休業や介護に関わる男性、持病を持つ人、外国籍の人等、マイノリティの多様化は今後ますます進むだろう。多様な人が能力を発揮できる社会、多様な知が融合してイノベーションが生まれる社会を実現するために、人材育成機関として大学はどんな役割が果たせるだろうか。小早川氏が大学に期待するのは、「学生が『オリジナリティーを発揮する思考』に転換する4年間」だ。「多様性とは、突き詰めればオリジナリティーの発揮。誰かの用意した正解を探しにいくのではなく、自分自身の正解を作っていくという思考の転換が必要です」。そのためには、「自己理解」が重要だと小早川氏は強調する。「これまでの日本社会は、自己理解を疎かにしてきました。旧来の終身雇用、年功序列をはじめとする日本型雇用システムにあっては、たとえ自己理解が浅くても、企業がキャリアや振る舞いを決めてくれたからです。しかし今は人生100年。従来の雇用システムが終焉を迎え、マルチステージへと変わる時代において、自分の軸がなければ前向きなキャリア形成は難しい。マイノリティに限らず、むしろ組織のマジョリティ側にいて、その特権を無意識に享受してきた男性が、30代、40代になって『本当に自分のしたいことが何か分からない』とつまずくケースも増えています。大学4年間で、男女問わず自己理解を深めるトレーニングをすることで、多様な価値観が涵養され、自分らしく活躍するリーダーが社会に輩出できるのではないでしょうか」。自己理解を深める手法としては、議論型の授業を進言する。「最初は議論に必要な知識を習得し、以降は学んだ知識を活用して、専門性に立脚した議論を展開する。学生同士のみならず企業や地域住民等、多様な他者との議論を重ねるなかで、持論を構築し、個々の専門性を深めていける仕組みが望ましいでしょう。形だけのアウトプットではなく、他者との関係性のなかで自らをメタ認知し、体得という身体知に落とし込むには、議論という手法が有効。既に取り組んでいる大学も多くなってきていますが、議論の機会や場の多様性が今以上に豊かになり、浸透・加速していくことを期待します。それが多様性社会における人材活躍につながるメンタリティを育むと思います」。特集2● 女性活躍推進と女子大学(インタビュアー/鹿島 梓、 文/武田尚子)
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