カレッジマネジメント242号
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9熊本大学と半導体関連企業をつなぎ、共同開発を推進2つのアプローチで人材を育成「半導体デバイス工学課程」「情報融合学環」熊本県と熊本大学の取り組みは、新産業創出のための企業との共同開発と、大学改革による半導体分野に強い人材輩出の大きく2つになる。まず新産業創出のための企業との共同開発の取り組みを見てみよう。半導体の製造過程には、前工程と後工程があり、前工程は半導体の回路部分を作成する工程で、シリコン等の原料から作られたICチップのもととなる「ウエハー」に回路を形成、後工程はウエハーを切り出してICチップとしてパッケージにする工程を指す。「熊本の半導体関連企業は前工程と製造装置を作る分野が非常に強く、この分野はこれまでも熊本大学との共同研究が進んできたのでさらに強化を進めていきます。加えて、前工程と後工程の間の中間工程として、チップを縦に積んでいく『三次元積層実装』という新しい技術の研究が世界で進んでいます。現在、三次元積層研究の第一人者である青柳昌宏氏が産業技術総合研究所(つくば市)から熊本大学にご着任され研究が進められています。熊本大学と半導体関連企業が連携して『三次元積層実装』の新産業を創出し、熊本県に新たな半導体サプライチェーンを生み出すことを目指しています」(辻井氏)具体的な取り組みとして、内閣府交付金で実施する熊本大学との共同研究への参画や三次元積層実装産業への参入拡大等を目的とした「くまもと3D連携コンソーシアム」を23年4月に立ち上げた。23年7月末時点で県内外から120社・機関が入会し、知見の共有や共同研究に向けた技術マッチング等に取り組んでいる。「現在、会員企業等と熊本大学による9つの共同研究プロジェクトが進められています。コンソーシアムを通じて産学官金が連携し、『三次元積層実装』の技術確立や新産業の創設に向けた取り組みが活性化していくことを期待します」(辻井氏)熊本大学の大学改革による半導体分野に強い人材輩出においては、今年24年4月に国内初の半導体専門のコースを設置しスタートした。工学部内に新たにできた「半導熊本大学工学部キャンパス体デバイス工学課程」と、学部相当として新たにできた「情報融合学環」の2つだ。工学部内に新たにできた「半導体デバイス工学課程」は、国内の大学で初の「半導体技術者・研究者」育成に特化した学士課程となる。工学部内には土木建築学科、情報電気工学科、材料・応用化学科、機械数理工学科の4つの学科があるが、新たにできた半導体デバイス工学課程は学科ではなく「課程」という名称となっている。「この『課程』は学科バージョンの一つです。半導体というものは様々な技術の総合産業といわれています。半導体の専門家を育成するために、工学部内の4学科の中の半導体に関係する教員が一緒になって半導体デバイス工学課程の学生を教えていく。それを実現するために生まれたのが半導体デバイス工学『課程』です」(熊本大学 工学部長 井原敏博氏)もう一つの情報融合学環は2年次からDS総合コースとDS半導体コースの2つが設定されている。DS総合コースでは一般的なデータサイエンス、DS半導体コースは半導体製造に特化したプロセスエンジニアの育成を目指す。「データサイエンスは様々な産業分野に使える汎用的な学問。半導体に限らず、医療、画像処理、物流の最適化や教育分野等にも活用できて出口がたくさんあります。もち熊本大学 工学部長井原敏博 氏特集1● 産学官共創の未来

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