カレッジマネジメント244号
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開かれた入口、学生の多様性、出口管理の重視通学制との境界のあいまい化によってもたらされた選択肢リクルート カレッジマネジメント244 │Apr. - Jun. 2025まさに双方向性です。ここを担保するのに非常に手がかかるわけですが、遠隔教育の学びの成立の鍵を握るのは、まさにこのプロセスなのです」(田口氏)。そうして単位を一つひとつ「勝ち取って」(文部科学省大塚千尋氏、本誌231号43ページ)いき、ようやく卒業に至ることになる。簡単なことではない。当然、卒業率は低くなる。鈴木氏は、それは必ずしも悪いことではないと指摘する。「本誌でのインタビュー(231号36-37ページ)で、吉見俊哉氏が通信制大学の優れた点として二つ指摘されていますね。一つは学生の多様性。ダイバーシティが保たれている。もう一点が、出口管理が重視されているということ。卒業率が低いことも過年度在学生の多さも、出口管理ができていることの証明なのですから、素晴らしいことだと言えるんですよ」(鈴木氏)。放送大学の英文名が「The Open University of Japan」であることが示すように、通信制大学の入口は大きく開かれたものだ。誰でも、いつでも、どこでも学べるよう学費は低く設定され、学力による絞り込みは基本的になされない。いきおい、年齢も属性もこれまでの学習経験も、非常に多様なものとなる(本号4ページ中段グラフ)。Case1の大手前大学、Case2の東京通信大学をはじめ多くの通信制大学では、こうした学生の多様性に対応するため、一人ひとりの学生との個別性の高いコミュニケーションを実施している。アカデミックアドバイザーを配置しLMS上で質問を促したり、学生同士のネットワーキングの構築を支援しSNS上での情報流通を活性化させたり…。年齢や職業等の違いは、活動時間帯や日常的に使用するメディアの違いに直結する。一筋縄ではいかない。「個別性への対応ぶりは、学生が皆同じ時間にキャンパスに来てくれることを前提にできる通学制の大学とは大きく異なります」(田口氏)。ICT化の進行により、通信制大学では2つの「あいまい化」が進んだと両氏は指摘する。34「一つは授業方法のあいまい化。先に示されたように通信制大学には4つの授業方法があるわけですが、放送授業とオンデマンド型のメディア授業は、講義動画の部分だけでは区別できませんし、印刷教材による授業もICT化によってメディア授業との差がなくなってきています。さらに、ハイブリッド型授業の普及で同時双方向型のメディア授業と面接授業の区別も意味がなくなってきた。授業の方法による通信制と通学制の境界はあいまいなものになっているのです」(鈴木氏)。「通信制と通学制の境界のあいまい化は今後さらに進展していくでしょう。制度上は通学制であっても60単位まではオンライン授業ができますし、対面授業も半分近くオンライン実施が可能です。つまり、通学制の大学であっても結局大学に来るのは1/4ぐらいで構わないわけです。まだまだそこまでオンラインを全面的にやっている通学制の大学はないようですが、既に大学院、特に社会人を対象としているところはそうなってきています」(田口氏)。Case3ではその具体事例としてグロービス経営大学院大学を取り上げた。実際社会人大学院では、修士課程・博士課程に拘わらず、1対1の論文指導は基本的にオンラインでの実施だという指導教員は珍しくない。社会人を対象に設計された履修証明プログラムでは、オンデマンド・リアルタイムオンライン・対面型を組み合わせた設計はむしろ多数派だ。授業方法の違いのあいまい化により、通信制大学にとっては「出口管理」の重要性が増したと鈴木氏は考える。「通信制大学は、通学制の代替物ではない『独自の存在』であり続けてきました。厳しい試験を突破した後は何となく通っていれば卒業できるなんてことはありません。先生の指導やサポートはあるけれど、自分の力で単位を積み重ね卒業まで至らなければならない。でもだからこそ、確たる自信を提供できてきたわけです。コロナ禍を経てあえて通信制を選ぶ人が増えた今、この点をいかに担保し続けていくかがポイントです」(鈴木氏)。教育機関を主語としてみると、教育の方法も学習支援のやり方についても「選択肢が増えた」(田口氏)ことになる。「どんな学生に対してどうやって教育目的を実現していくか。大学がそれぞれ最適な組み合わせを追求することが可能になったのです」(田口氏)。通信制大学の今後の展開からは目が離せない。

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