カレッジマネジメント244号
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15リクルート カレッジマネジメント244 │Apr. - Jun. 2025特別企画人口減でも一人ひとりの知のスペックを上げて日本を元気に答申の背景にある課題認識PROFILE永田恭介 1953年生まれ。1976年東京大学薬学部薬学科卒業。1981年東京大学薬学系研究科博士課程修了。国立遺伝学研究所助手、東京工業大学助教授を経て、2001年筑波大学基礎医学系教授、2013年に筑波大学長就任。2015年より中央教育審議会大学分科会会長、2017年より中央教育審議会副会長、2019年より国立大学協会会長を歴任。――今回の答申をまとめるにあたって、背景にはどんな課題認識があったのでしょうか。もともとの危機感として、日本はビジネスも学問も停滞して元気がない、これをなんとかしたいというのが一番の発端でした。直接の原因は経済の停滞です。『ジャパン・アズ・ナンバ-ワン』からアメリカが学んだのは、日本型のものづくりモデルにはもう勝てないということでした。そこから方向性を根本的に変えてデジタル産業に大きく舵を切った。日本はこれに遅れたわけです。この遅れた理由が問題で、イノベーションを担う人がいないからです。我が国全体に高揚感がなく、リスクを冒してでも何かやろうという人がいない。やはり「人」なんだとなったときに、もう人が増えないという大変なことに気づき、これが原因に帰着するところです。どのくらい減るかというと、18歳人口が2040年には今より3割減り、2050年には半分にも減るのです。実はグランドデザイン答申の時にも、「人の数×個々のスペック」のシグマが激減することには気づいていましたが、当時の社会認識がそこまで協調的ではありませんでした。私が特別部会の最後に「今回(知の総和答申)の仕上がりが、グランドデザイン答申のほぼ目的だった」と述べたのにはこういう背景があります。人の数が減少しても、一人ひとりの知のスペックを上げて、日本全体の知を維持、向上させようというのがこの答申の目的なのです。――文科省の試算によると、入学定員300名ぐらいの中間的規模の大学が毎年90校ずつ減っていく計算になります。地域によっては空白地帯が出てくる可能性もあり、東京一極集中と地方の問題をどう考えていますか。そのキーポイントは小学校廃校の頃からありました。町に小学校がなくなった途端、急速に過疎が進んだことか

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